TechCrunchは23日(現地時間)、今週公開されたSpaceXの新規株式公開(IPO)資料を基に、イーロン・マスク氏が率いるxAIのデータセンターが天然ガスタービンで稼働していると報じた。Teslaがこれまで掲げてきた経済の電化や太陽光発電中心の構想との隔たりが改めて浮き彫りになった形だ。
Teslaはこれまで4回にわたり「マスタープラン」を公表してきた。その中核にあるのは一貫して「経済の電化」だ。マスク氏は最初のマスタープランで、Teslaの使命について「採掘と燃焼に依存する炭化水素経済から、太陽光による電力経済への移行を加速させることだ」と説明していた。
一方で、xAIの現実の電源構成はそれと大きく異なる。TechCrunchによると、xAIは規制の対象外とされる天然ガスタービンを数十基使ってデータセンターを動かしており、さらに28億ドル(約4200億円)相当を追加購入する計画だという。クリーンエネルギーを掲げて事業を拡大してきたマスク氏の企業群が、足元では化石燃料に依存している構図だと同メディアは指摘した。
マスク氏は、自身が率いる企業同士の取引も進めている。SpaceXはCybertruck 1279台の購入に1億3100万ドル(約197億円)を投じ、xAIは過去2年間でTeslaのMegapack(大規模蓄電システム)に6億9700万ドル(約1046億円)を支出した。一方で、xAIがTeslaから太陽光パネルを一定規模で購入した事例は確認されていないという。
SpaceXの資料では、太陽光の活用先として地上よりも宇宙が前面に出ている。地上の太陽光発電は、xAIのデータセンター向け電源としてではなく、宇宙太陽光発電の優位性を示す比較材料として触れられるにとどまる。SpaceXは、宇宙の太陽光アレイであれば24時間日照を確保でき、地上と比べて「5倍以上のエネルギー」を生み出せると主張している。
マスク氏は、xAIの現在のデータセンターをあくまで暫定対応とみているようだ。SpaceXがギガワット級のサーバー群を軌道上に展開できるようになれば、地上施設は不要になるとの構想だという。ただ、TechCrunchはこの見方には誤算がある可能性もあると伝えている。
SpaceXが米証券取引委員会(SEC)に提出した資料には、「AIコンピューティング需要が毎年テラワット級で拡大する」との趣旨の表現が繰り返し登場する。世界のデータセンターの消費電力が現在およそ40ギガワットとされる中で、極めて大きな前提だ。マスク氏は、世界全体で毎年テラワット級の計算資源が追加で必要になるとの想定に立って構想を描いていることになる。
人類全体の年間エネルギー消費は現在、約3万5000テラワット時規模に達する。AIによる電力需要が今後さらに急増するのか、それとも伸びが鈍化するのかは現時点では見通せない。ただ、TechCrunchは、マスク氏が転換点でトレンドを見極め、大胆な賭けに出る経営スタイルで知られると評している。
もっとも、太陽光パネルを地上でトラック輸送する方が、軌道上に打ち上げるよりもエネルギー消費を抑えやすい。宇宙向けの太陽光パネルについても、前例のない規模での生産が必要になる。
TechCrunchは「地球上で太陽光を活用する余地は依然として大きい。マスク氏はわずか3年前、Teslaのマスタープラン第3部で『化石燃料をなくす』と宣言していた。そうであるなら、まずは天然ガスで動くxAIのデータセンターから見直すべきではないか」と指摘した。