OpenAIのサム・アルトマン氏は21日、Anthropicが新たなサイバーセキュリティモデル「Claude Mythos」を一部企業に限定して提供していることを巡り、その説明は「恐怖マーケティング」だと批判した。AIの安全性と公開範囲をどう両立させるかを巡り、両社の溝が改めて鮮明になった。
米TechCrunchによると、アルトマン氏はポッドキャスト「Core Memory」に出演し、Anthropicについて、モデルの危険性を実際以上に印象づけることで不安をあおっているとの見方を示した。
発言の対象となったのは、Anthropicが今月初めに公開した「Claude Mythos」の提供方針だ。同社はこのモデルを一部の企業顧客に限って提供している。
Anthropicは、サイバー犯罪者による悪用への懸念を理由に、一般公開は難しいとしてきた。一方で、こうした説明は危険性を過度に強調しているとの批判も出ている。
アルトマン氏はこの対応について「恐怖マーケティング」だと指摘したうえで、AIを少数の排他的な集団の手にとどめようとする動きは以前からあったと述べた。そうした姿勢はさまざまな論理で正当化され得るとも語った。
モデルのリスクを強調し、利用対象を絞る戦略は、結果として技術の統制を一部に集中させかねないというのが同氏の問題意識だ。
アルトマン氏はさらに、Anthropicのメッセージをなぞる形で、「私たちは爆弾を作り、まもなくそれをあなたの頭上に落とす。だが代わりに1億ドルの防空壕を売ろう、というのは大したマーケティングだ」と述べた。
リスクを強く打ち出すことで、自社製品の希少性と必要性を高めているという批判といえる。
今回の応酬は、OpenAIとAnthropicの競争が、単なるモデル性能の比較にとどまらず、安全性や公開範囲を巡るメッセージ戦略にも広がっていることを示している。Anthropicは「Claude Mythos」を一般向けに提供しない理由として悪用リスクを前面に掲げ、アルトマン氏はそれを市場向けの訴求に近いと批判した。
もっとも、こうした手法はAI業界全体で必ずしも珍しくないとの見方もある。AIが過度に強力になり、社会的リスクを高める可能性があるとの警告は、技術に批判的な立場の論者だけでなく、実際にAIを開発・販売する企業からも繰り返し発せられてきた。
その意味では、アルトマン氏自身もこうした議論と無縁ではないとの指摘がある。
今回の発言は、競合企業へのけん制にとどまらず、生成AI企業が安全性の議論を事業戦略とどう結び付けているかを改めて示した事例ともいえる。とりわけサイバーセキュリティのように悪用への懸念が大きい分野では、公開制限や顧客の選別、リスクの強調が製品戦略の一部になりやすい。
OpenAIとAnthropicの応酬は今後も、AIの安全性とアクセス制御を巡る議論と絡み合いながら続く可能性がある。