中国の研究チームが、ウエハー級の2次元半導体を従来比約1000倍の速度で成長させる新プロセスを開発した。シリコン微細化の限界が意識されるなか、次世代半導体材料の量産技術として注目を集めそうだ。
米ITメディアのTechRadarが4月16日(現地時間)に報じたところによると、中国の国防科学技術大学と中国科学院金属研究所の研究チームは、化学気相成長(CVD)法を見直し、単原子層のタングステン・シリコン・ナイトライド薄膜をウエハーサイズで成長させる技術を示した。
鍵となったのは基板構造の変更だ。研究チームは従来の固体基板に代えて、液体金とタングステンによる二層構造を採用。成長速度向上を阻んでいた制約を緩和したとしている。
この手法により、ドーピング特性を制御できる単原子層薄膜を約1.4×0.7インチのサイズで実現した。研究チームは、今回の成果を高性能2次元半導体のスケーラブルな製造につながる初期成果と位置付けている。
半導体業界では、シリコンベースのプロセスが原子スケールに近づき、微細化競争は事実上の限界に達しつつあるとの見方が広がっている。トランジスタの微細化が進むほど、量子効果や発熱の問題は大きくなる。加えて、AIや大規模言語モデル(LLM)の普及で演算需要も急増しており、既存構造の延長線上だけでは性能向上が難しいとの指摘がある。
こうしたなか、原子レベルの薄さを持つ2次元半導体が有力な代替候補として注目されている。なかでも、次世代トランジスタ設計に不可欠なp型2次元半導体材料の不足は、主要なボトルネックとされてきた。
国防科学技術大学のチュ・モンジェン研究員は、「高性能なp型材料の不足が、5ナノ以下の2次元半導体開発における中核的な制約要因だ」と指摘した。今回開発したタングステン・シリコン・ナイトライド薄膜については、こうした制約を踏まえた候補材料として提示した。
研究チームによると、同薄膜は高い正孔移動度やオン状態電流密度に加え、機械的強度、放熱性、化学的安定性も備える。単結晶領域もサブミリメートル規模まで拡大したという。
成長速度は大幅に向上した。従来は約5時間で0.00004インチの成長にとどまっていたが、今回は1分当たり約0.0008インチに達した。研究チームは、数値上で従来比約1000倍の改善に当たるとしている。
もっとも、商用化に向けた課題は残る。今回の研究は、実験室レベルでセンチメートル級のフィルム形成を実証した段階にあり、欠陥のないウエハーを大量生産する工程とはなお隔たりがある。
液体金ベースの基板も、研究用途では有効でも、産業用途ではコスト負担が大きいとみられる。
業界では、今回の成果を2次元半導体の製造技術における重要な前進と受け止める一方、実際に量産へ適用できるかは別問題だとの見方が根強い。過去にも、有望視された2次元材料が論文段階にとどまり、産業化に結び付かなかった例は少なくない。
今後の焦点は、スケーラビリティと経済性の両立にある。このプロセスが量産性とコストの課題を同時に克服できれば、ポストシリコン時代の半導体競争の構図を左右する技術になる可能性がある。