韓国の科学技術情報通信部と韓国研究財団は、韓国科学技術人賞の4月受賞者に延世大学新素材工学科のシム・ウヨン教授を選んだ。自然界には存在しない新構造のIII-V族半導体材料を提案し、半導体としての電気特性とメモリ機能の両立を示した研究成果が評価された。
同賞は、直近3年間に独創的な研究成果を挙げ、科学技術の発展に大きく寄与した研究者を毎月1人選ぶ制度だ。受賞者には科学技術情報通信部副総理賞と賞金1000万ウォンが贈られる。
科学技術情報通信部と韓国研究財団は、4月の受賞者選定にあたり、シム教授が自然界に存在しない新構造のIII-V族半導体材料を開発した点を高く評価した。III-V族半導体は、周期表の3族元素と5族元素を組み合わせた化合物半導体を指す。
従来のIII-V族化合物半導体は、電子を高速で移動させられる一方、イオンが移動する余地が乏しく、新たな電子機能の実装には限界があった。
これに対しシム教授は、カチオン・ユータキシ(cation-eutaxy)構造に基づく新たな半導体設計の概念を提案した。さらに、一部元素のみを選択的に除去するトポケミカル・エッチング(Topochemical Etching)を用いて、イオンが移動可能なファンデルワールス間隔を形成した。ファンデルワールス間隔は、分子や原子が強固に結合せず、弱い相互作用で保たれる距離を指す。
この新構造III-V族半導体材料について、シム教授は半導体の電気特性とメモリ機能を同時に活用できることを実証した。1つの材料で記憶と演算を担うコンピュート・イン・メモリ方式は、AI演算に伴うエネルギー消費を大幅に抑えられるとしている。
また、信号の強さや時間に応じて結合強度が変化する、脳神経回路のシナプス動作も模倣できるとし、ニューロモルフィックAI素子への応用も期待されるという。
今回の成果は、計算科学による精密な材料探索と実験的な合成研究を進める科学技術情報通信部の「未来素材ディスカバリー事業」の支援を受けて得られた。研究成果は2024年10月に国際学術誌「Nature Materials」に掲載され、同誌10月号の「今月の研究ブリーフィング論文」にも選ばれた。
シム教授は2025年、ナノ科学分野で影響力の大きい学術誌の1つである米国化学会(ACS)刊行の「Nano Letters」の副編集長にも選任されており、国際学術界での活動も広げている。
シム教授は「自然界に存在しない新しい半導体材料を、韓国の研究陣が世界で初めて提案した点に大きな意味がある」とコメント。「今後も韓国が新素材研究をリードできるよう、挑戦的な研究を続けたい」と述べた。