KAISTは4月8日、新素材工学科のホン・スンボム教授の研究チームが、原子間力顕微鏡(AFM)を軸に強誘電体研究の解析・制御手法を体系的に整理したレビュー論文を発表したと明らかにした。AFMを単なる観察装置にとどめず、次世代材料の設計や制御に活用するための指針を示したという。
強誘電体は、自発分極を持ち、外部電場によってその向きを制御できる材料で、不揮発性メモリや高精度センサーなどへの応用が期待されている。半導体デバイスの微細化が進むなか、ナノスケールで生じる物理現象がデバイス性能を左右する重要な要素となっている。
研究チームは、AFMによって物質表面をナノレベルで観察し、局所的な特性評価や制御まで行う研究の枠組みを整理した。AFMは微細な探針で表面を走査し、原子レベルの情報を取得できる装置だ。
論文では、AFMを基盤に、圧電応答力顕微鏡(PFM)、ケルビンプローブ力顕微鏡(KPFM)、導電性原子間力顕微鏡(C-AFM)といった手法を統合。材料の構造、表面電位、電流経路などを複合的に把握し、電荷分布や物性を立体的に解析する考え方を示した。
またAFMは、ナノスケールの局所領域に電気刺激や圧力を直接加え、材料の特性を変化・制御できる点にも特徴がある。研究チームは、AFMが観察装置から、材料設計や精密制御を担う実験ツールへと発展してきた流れを整理した。
さらに、二硫化モリブデン(MoS2)などの二次元遷移金属ダイカルコゲナイド材料や、超薄膜のハフニウム・ジルコニウム酸化物(HfZrO2系)といった次世代半導体材料の評価・特性改善にAFMが活用されている点も紹介した。
今後の方向性としては、高速AFMとAIを組み合わせることで、複雑なナノ構造の解析を高速化し、より高性能な材料を効率よく設計する可能性を示した。
ホン教授は「今回の研究は、AFMが単なる観察装置を超え、新素材を設計し精密に制御する中核的なプロセスツールとして定着しつつあることを示している」とコメントした。その上で「AIと組み合わせた解析技術は、次世代半導体やエネルギー材料分野で技術的優位性を確保するうえで重要な役割を担う」と述べた。
研究成果は、英国王立化学協会が発行する国際学術誌「Journal of Materials Chemistry C」に表紙論文として掲載された。