米カリフォルニア大学バークリー校の経済学者、ガブリエル・ズックマン氏が、純資産1億ユーロを超える超富裕層に対し、年間で少なくとも純資産の2%に相当する税負担を求める案を打ち出した。億万長者課税を巡る議論は再び勢いを増しており、この提言はG20でも具体策の一つとして取り上げられている。
クリーンテック系メディアのCleanTechnicaが6日(現地時間)に報じたところによると、ズックマン氏の新刊は約60ページの小冊子ながら、フランス議会での採決につながり、G20でも政策論議の俎上に載った。
ズックマン氏が問題視するのは、超富裕層の実効税率が中間層の労働者を下回るという税負担構造のゆがみだ。米国、フランス、ドイツ、オランダなどで、こうした逆転現象が生じていると主張している。
その要因について同氏は、単なる制度の抜け穴ではなく、資産を法人に組み入れたり、課税の発生を先送りしたりできる制度設計そのものが生む構造的な結果だと説明する。配当や資産売却が行われるまで課税されない仕組みの下では、賃金所得を中心とする現行の所得税体系では、蓄積した資産に十分な課税を行いにくいという。
提案する「最低2%課税」は、従来の富裕税とは異なる。純資産1億ユーロ超の資産家に対し、年間の税負担が少なくとも2%相当に達するよう求める一方、すでに他の税で同水準以上を負担している場合は、上乗せ課税を行わない仕組みだ。
ズックマン氏はこれを「上限ではなく下限」と位置付ける。フランスではこの構想が「ズックマン税(Taxe Zucman)」とも呼ばれ、政策論争の焦点になっている。
税収効果の試算も示した。世界の約3000人の億万長者に適用した場合、年間で約2500億ドル(約37兆5000億円)の税収を見込めるとしている。
対象を、純資産1億ドル超の富裕層である「センティミリオネア(centi-millionaires)」まで広げれば、さらに年間1400億ドル(約21兆円)の税収上積みが可能だと試算した。
フランスについては、上位500人の保有資産の規模が、過去30年で国内総生産(GDP)比6%から42%へ拡大した点を挙げた。この課税の対象は約1800人に上り、財政赤字の圧縮にも寄与し得るとしている。
反対論でたびたび指摘される富裕層の国外流出については、解決策として国際協調の必要性を訴える。130を超える法域で導入が進むグローバル法人最低税率15%を例に、主要国が足並みをそろえれば、租税回避の余地は大きく狭まると強調した。
また、居住地の移転による租税回避を防ぐ手段として、出国税(exit tax)の導入にも言及した。スタンフォード大学の研究を引用し、億万長者は一般に考えられているほど容易には移住しないことも根拠に挙げている。
ズックマン氏は今回の論点を、技術ではなく政治の問題だと位置付ける。富の過度な集中は、企業買収や規制形成、政治献金、世論空間への影響力の拡大を通じて、権力の集中を一段と深めるという見方だ。
同氏は「富はすなわち権力だ」と強調する。資産が年7〜10%のペースで増える一方、実効税率が0〜1%にとどまる現状は政策の選択の結果だと指摘した。累進課税は単なる財源確保の手段ではなく、民主主義が恒久的な寡頭化を防ぐための中核的な仕組みだと主張している。