写真=NASA

米航空宇宙局(NASA)が、有人月ミッション「Artemis II」でiPhone 17 Pro Maxを撮影機材として運用していることが分かった。乗員4人に1台ずつ支給し、通信機能を無効化したうえで、写真と動画の撮影、記録用途に限定して使用している。5日(現地時間)、9to5MacやTechRadarなどが報じた。

運用されているのは、月に向かうOrion宇宙船内だ。NASAは端末のインターネット接続とBluetoothを無効化し、機内システムへの影響を避けながら撮影専用端末として活用しているという。

民生用電子機器が宇宙に持ち込まれた例はこれまでにもあるが、乗員個人にスマートフォンを支給し、撮影を担わせるケースは今回が初めてとみられる。単なる利便性向上ではなく、制約の多い宇宙環境で市販端末をどこまで実用機材として使えるかを見極める側面もある。

機器の安定性や素材の耐久性、極限環境での動作可否については、通常以上に厳格な検証が行われたと伝えられている。AppleのCeramic Shieldも、こうした環境下での耐久性という観点から注目されている。

NASAは撮影画像も順次公開している。公開写真には、Orion宇宙船内で地球を見つめる乗員の様子が収められている。

クリスティナ・コウとリード・ワイズマンが写った写真は、いずれもiPhoneの前面カメラで撮影されたことが確認された。ワイズマンは自身のSNSに追加の写真を投稿し、「There are no words」とコメントした。

月を捉えた画像も関心を集めている。公開された写真には、地球からは見えないオリエンタル盆地(Orientale Basin)が含まれており、一部メディアは「人の視点で盆地全体を捉えた初の画像となる可能性がある」と報じた。

もっとも、iPhoneが唯一の撮影機材ではない。乗員はGoPro Hero 11やNikon D5などの専用機材も併用している。

それでも、日常的なデバイスに近いスマートフォンが宇宙空間で実用的な成果を上げている点は象徴的だ。将来の宇宙ミッションにおいて、商用技術の採用が広がる可能性を示す事例としても注目される。

ミッション終盤には、飛行記録の更新にも関心が集まる。Orionは月周回後の帰還過程で地球から約40万km以上離れ、有人飛行として最長距離の記録を更新する見通しだ。

地球再突入時の速度は時速約2万5000マイル(約4万km)に達する見込みで、史上最速の有人再突入となる可能性もある。

今回の事例は、珍しい機材の持ち込みにとどまらない。消費者向け技術が宇宙探査の現場で実用段階に入りつつあることを示す動きとして、今後のミッション設計にも影響を与えそうだ。

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