モバイル・PC向けプロセッサのコア構成が転換期を迎えている。低電力のリトルコアを組み合わせるBig.LITTLE構成から、高性能コアを軸にした混在設計へと重心が移りつつある。背景には、2nm GAAプロセスによる電力効率の改善と、オンデバイスAIの処理負荷拡大がある。
この流れを象徴するのが、Samsung ElectronicsとQualcommの次世代プロセッサだ。業界によると、Samsung ElectronicsのExynos 2600は低電力リトルコアを廃し、10コアを「1+3+6」で構成する設計を採用した。QualcommのSnapdragon X2 Eliteは、12基のプライムコアと6基のパフォーマンスコアを組み合わせた18コア構成とした。いずれも超低性能コアを使わず、中・高性能帯のコアを中心に再設計した点が特徴だ。
Samsung Electronicsは先月、同社WebサイトでExynos 2600が量産段階に入ったと明らかにした。業界では、2027年上半期に発売が見込まれるGalaxy S26シリーズへの搭載観測が出ている。
先行例とされるのはAppleだ。Appleは2020年に投入したM1で、高性能の「Firestorm」4コアと高効率の「Icestorm」4コアを組み合わせ、優れた電力性能比を実現した。Intel製ノートPCを上回る性能効率を示したことで、この設計思想はその後のWindows陣営にも影響を与えた。
その後、MediaTekは2023年11月、リトルコアを排したDimensity 9300を発表した。Cortex-X4を4基、Cortex-A720を4基搭載し、前世代比でマルチコア性能を40%高めた。MediaTekのジョー・チェン社長は「オールビッグコア設計によって、フラッグシップスマートフォンの演算能力を大幅に引き上げた」と説明している。
こうした設計転換を支えているのが、微細化の進展だ。2nm GAA(Gate-All-Around)プロセスの導入により、高性能コアでも電力効率を確保しやすくなった。TSMCはN2プロセスについて、N3E比で同一性能時に25~30%の消費電力を削減できるとしている。リトルコアに依存しなくても、発熱やバッテリー消費を抑えられる環境が整いつつある。
<中負荷処理をどう効率化するか>
ワークロードの変化も、コア構成見直しの一因だ。Android OSのバックグラウンド処理やオンデバイスAI機能の負荷が高まり、従来のリトルコアでは処理のボトルネックが生じやすくなった。処理を短時間で終えて電力を落とす「Race-to-Sleep」の考え方が、低速コアで長時間処理を続けるよりも電力効率で有利になっている。
Qualcommはこの課題に対応するため、Snapdragon X2 Eliteでプライムコアとパフォーマンスコアを組み合わせる構成を採った。2025年に開催されたSnapdragon Summit 2025で、Qualcomm Computeのプロダクトマネジメント担当シニアディレクター、マンダル・デッシュパンデ氏は韓国記者団とのインタビューに対し、「中間負荷を処理するパフォーマンスコアを導入し、ワークロードを分散した」と語った。初代では軽いWeb閲覧のような処理でも最上位のプライムコアを使う場面があり、電力面で無駄があったという認識を示した。
Snapdragon X2 EliteのExtremeモデルは、18コア構成に加え12チャネルメモリを備え、AIエージェントの応答速度を高めた。デッシュパンデ氏は「エージェンティックAIの普及で、複数のエージェントが同時に動く環境が増えている。最初のトークン応答時間を短縮するには、より大きな演算能力が必要になる」と述べた。Qualcommは、Extremeモデルを含むX2 Elite搭載機器を2026年上半期に投入するとしている。
Samsung ElectronicsもExynos 2600で同様の方向にかじを切った。ITメディアのPhoneArenaによると、Exynos 2600は従来の低電力リトルコアをなくし、Armアーキテクチャベースのデカコア(10コア)を「1+3+6」で構成する。ビッグコア1基、中性能コア3基、高効率コア6基に再編した形だ。Samsung Electronicsによれば、Exynos 2600は前世代比でCPU性能が39%、NPU性能が113%、GPU性能が100%向上した。
今後のプロセッサ競争は、「どれだけ強いコアを載せるか」だけでなく、「中間クラスのワークロードをどれだけ効率よく処理できるか」に軸足が移る可能性が高い。あわせて、2nmプロセスの重要性も一段と高まる。オールビッグコア構成ではリーク電流を抑えきれなければ発熱増につながるため、熱設計を支えるGAAベースの2nmが重要な前提条件になる。
その結果、ファウンドリ市場の競争構図にも注目が集まっている。TSMCの2nm生産ラインは、AppleやQualcommなどコア構成の転換を進める企業が先行して押さえているとされる。一方、2nm製造に対応できるSamsung Foundryは代替候補として注目され、中国ファウンドリの台頭も不確定要因として浮上している。業界関係者は「本格的な2nm時代に入った。高性能コア中心の設計が標準になれば、先端プロセスの確保競争はさらに激しくなる」と話している。