前年に急拡大したAIインフラ投資が、2026年1〜3月期に鈍化する可能性が強まっている。これに伴い、HBM市場も短期的な調整局面に入る公算が大きい。
Goldman Sachsによると、ハイパースケーラー各社の2026年の設備投資(Capex)に関する市場コンセンサスは5270億ドルと過去最高を更新した。ただ、投資規模は拡大を続ける一方で、増勢そのものは鈍化局面に入ったとみられている。
設備投資の成長率は、前年7〜9月期に前年同期比75%まで高まった後、10〜12月期には49%へ低下。2026年末には25%まで鈍化するとの見方が出ている。
市場では、この減速感が1〜3月期からより鮮明になるとの見方が広がっている。Morgan Stanleyは、主な懸念は大企業の需要鈍化そのものではなく、データセンター建設に伴う供給制約にあると分析した。
具体的には、電力供給、用地規制、半導体など中核ハードウェアの供給余力が、AI導入のスピードと短期成長を抑える要因になり得ると指摘している。
こうした環境下で、ビッグテック各社が現行世代のHBM3Eの発注を一時的に見直し、4〜6月期から量産が始まるHBM4へ投資の軸足を移す可能性が高いとの見方が出ている。供給が限られるなか、次世代品に調達を集中させる戦略を選ぶという見立てだ。
加えて、AIチップの演算性能の伸びがメモリ帯域の拡大を上回る「メモリの壁(Memory Wall)」も深刻化している。TrendForceによると、AIモデルの演算能力は過去2年間で3倍に増えたのに対し、メモリ帯域は1.6倍、相互接続帯域は1.4倍の増加にとどまった。
システム全体の性能がデータ転送速度に制約される構造的な不均衡が強まるなか、ビッグテック各社が限られた供給分をHBM4に優先配分する動機は一段と強まっている。
実際、NVIDIAの最高経営責任者(CEO)ジェンスン・フアン氏は、1月の「CES 2026」で次世代AIコンピューティングアーキテクチャ「Rubin」を打ち出し、本格量産の方針を示した。次世代製品を軸とする再編の動きは、これを機にさらに加速した。
通常は3月以降の開発者会議「GTC」で新製品を公表してきたNVIDIAが、今回スケジュールを約2カ月前倒ししたことについては、HBM4の供給時期を早める狙いがあるとの受け止めも出ている。
RubinはHBM4を採用し、総帯域幅は2TB/sに達する。インターフェース幅を2048ビットへ倍増し、クロック速度を引き上げずにデータ処理量を増やせるとしている。
Micronも直近の決算説明会で、HBM4は2026年4〜6月期に本格量産へ入る見通しを明らかにした。
HBM4量産控え、1〜3月期は発注の空白も
こうした変化は、HBMの供給側にも直接影響しそうだ。1〜3月期は半導体供給のボトルネックとHBM4量産に向けた準備期間が重なり、発注タイミングの調整が起きる可能性が高い。
HBM4の量産本格化は4〜6月期とみられており、SK hynixとSamsung Electronicsの1〜3月期業績見通しにも影響が及ぶ可能性がある。
業界関係者は、供給制約が続くなかで、メモリの壁の解消を急ぐビッグテック各社にとっては、HBM3Eより大幅な性能向上が見込めるHBM4へ投資を集中する誘因が大きいと話す。そのうえで、4〜6月期の量産本格化を前にした1〜3月期に、発注の空白が生じる可能性があると指摘した。
もっとも、Samsung ElectronicsやSK hynixなどメモリ各社については、短期的な業績圧力があっても、中長期の成長ドライバーは維持されるとの見方が多い。Samsung ElectronicsはHBM4の技術開発を急ぎ、SK hynixの優位に挑む構図となっている。
TrendForceは、Samsung Electronicsが高い技術力を背景に次世代HBM市場でシェアを拡大する可能性があると分析した。別の業界関係者も、4〜6月期以降にHBM4の量産が本格化すれば、受注は急増するとの見通しを示している。