半導体ウエハー。写真=European Semiconductor Industry Association

欧州の半導体技術企業が、量産検証の拠点として韓国への接近を強めている。欧州域内では研究開発力を持ちながら量産ラインでの実証基盤が乏しく、Samsung ElectronicsとSK hynixの先端生産ラインが有力な協業先として浮上しているためだ。韓国は装置の輸入市場から、共同開発のパートナーへと位置付けが変わりつつある。

これまで韓国は、米国、日本、オランダ製の半導体製造装置を導入して運用する市場とみられてきた。だが足元では、欧州の基盤技術企業が開発段階から韓国企業と連携するため、現地を直接訪れる動きが広がっている。単なる生産拠点にとどまらず、次世代半導体技術の実証の場として韓国の存在感が高まっている。

背景には、欧州の産業構造がある。ベルギーのIMECやドイツのFraunhoferに代表される世界有数の研究機関を擁し、基盤技術の厚みはある一方で、量産ラインで技術検証を担う総合半導体メーカー(IDM)が乏しい。韓国・EU半導体R&D協力センターによれば、「SamsungやSKのラインでテスト中」という実績は、欧州スタートアップにとって資金調達を後押しする有力な材料になるという。

欧州側の事情も韓国シフトを促している。Broadcomは昨年、スペインで進めていた10億ドル規模の半導体組立・テスト工場(ATP)への投資を撤回した。スペインは122億5000万ユーロ規模の半導体育成プログラムを運用してきたが、大型製造拠点の誘致には至らなかった。EUチップス法の資金がドイツ・ドレスデンなど既存の集積地に集中する中、欧州の技術企業は量産検証の新たな受け皿を域外にも求めている。

米国や中国への展開も容易ではない。米中対立を背景に中国向け輸出には制約があり、米国ではIntelやMicronを中心とした国内エコシステムの結び付きが強い。一方の韓国は、メモリとファウンドリーの先端プロセスを併せ持つ市場だ。DRAM、NANDメモリ、ロジックファウンドリーを一体で検証できる点で、業界では韓国の優位性を指摘する声が出ている。

◆既存装置では対応困難、ニッチ技術に商機

韓国を訪れる欧州企業の多くは、Samsung ElectronicsやSK hynixが抱える技術課題に対応できるニッチ技術を持つ。主な領域は、次世代パッケージング・新素材、超微細プロセス計測、設計シミュレーションの3分野だ。

次世代パッケージングでは、ガラス基板技術への関心が高い。従来のプラスチック基板では、高性能コンピューティング(HPC)向けチップで求められる熱管理や信号伝送性能に限界があるためだ。Samsung Electro-MechanicsとSKC Absolicsが進めるガラスコア基板の商用化に必要な材料技術を持つ欧州企業が、来月開催されるセミコン・コリアに合わせて訪韓する予定という。

超微細プロセスの計測分野でも需要は大きい。3D NANDの積層数が300層を超える中、深く狭い穴の内部に均一なコーティングが施されているかを確認する検査技術の重要性が増している。高アスペクト比(HAR)構造の薄膜を非破壊で測定する技術や、ウエハー表面のナノレベルの凹凸を高速で計測するウェーブフロント位相イメージング技術を持つフィンランド企業やスペイン企業が、韓国市場への参入を探っている。

設計検証の需要も拡大している。2ナノメートル以下の先端プロセスでは、マスク製作費が数百億KRW規模に達し、試作の手戻りをいかに減らすかが重要になる。このため、実チップ製作前にコンピュータ上で物理動作を予測する3D TCADシミュレーション技術を持つオーストリア企業も、Samsung Foundryや韓国のファブレス企業との協業を模索しているとされる。

HBM(高帯域幅メモリ)の高度化も、欧州企業にとって新たな商機となっている。TSV(シリコン貫通電極)やハイブリッドボンディングの採用で工程は一段と複雑になり、既存装置だけでは解決しにくい課題が増えているためだ。2019年の日本による輸出規制以降、韓国企業が素材・部品・装置のサプライチェーン多角化を進めてきたことも、欧州の中小企業にとって参入余地を広げる要因になっている。

欧州企業と韓国企業をつなぐEUビジネスハブは、「Semiconductor Korea 2026」などを通じて、双方のグローバルネットワーク拡大を後押しする方針だ。業界関係者は「欧州企業の技術がどこまで実際の成果につながるかが焦点になる」とした上で、「韓国の半導体素材・部品・装置企業にとっては潜在的な競合になり得る一方、技術提携を通じて欧州進出を図る際のパートナーにもなり得る」と話している。

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