Anthropicは、現行のロボットが人間の肉体労働の多くを技術的には担える一方、コスト面まで含めると人より安く代替できる業務はごく一部に限られるとの分析結果を公表した。
Gigazineが10月1日(現地時間)に報じた。Anthropicは約900職種、1万9000の業務を対象に、現行ロボットでどこまで対応できるかと、その経済性を試算した。
今回の分析では、ロボットを周囲の環境を認識して動作する自律型の物理機械と定義。現在の技術水準で既存の職務をどの程度担えるかを検証した。
分析では、業務データベースをClaudeに入力し、各業務についてロボットによる遂行可否と、人間と同等の生産量を達成するために必要なコストを評価した。
ロボットの対応可能性は4段階に分類した。E0はロボットでは対応できない業務、E1は工場の組立ラインのようにロボット中心で設計された環境で対応可能な業務を指す。
E2は物流倉庫のように、人間向けに作られた比較的構造化された環境で対応可能な業務、E3は都市部の道路のような複雑で非定型な環境でも対応可能な業務とした。
総労働時間でみると、認知・対人業務が54%、肉体労働が46%を占めた。内訳はE0が約12%、E1が23%、E2が10%、E3が1%だった。
E1からE3を合計すると、全労働時間の約34%が現行ロボットで対応可能な領域に入る。これを肉体労働に限ってみると、比率は約74%まで上昇する。
つまり、技術的には現行ロボットが人間の肉体労働の大半を担える計算になる。ただ、採算性まで加味すると見え方は大きく変わる。
代表例として挙げたのが梱包業務だ。分析では、梱包作業のロボットによる代替可能性を97%と評価した。
米国における同業務の年収中央値は約4万9000ドル。これに対し、同等の生産量をロボットで処理する年間コストは約4万5400ドルと試算した。このケースでは、ロボットのほうが低コストで、自動化が採算に合う可能性があるとした。
一方、タクシー運転や皿洗いは、技術的には実行可能でも費用競争力に乏しいと分析した。特に皿洗いは代替可能性を100%と評価したが、ロボットの利用コストは人手の3倍超に上ると推計した。
最終的に、人より低コストで実行できる業務は全体の0.3%にとどまった。技術的に可能であることと、実際に現場で人を置き換えられるだけの経済性を備えることは別問題だと指摘している。
今後の変数としては、ロボット価格の下落もある。分析では市場データを基に、ロボット価格が1990年代以降、年平均で約3%下落してきたとした。
ただ、このペースが今後も続くと仮定しても、コスト面で人間より競争力のある業務の比率が全体の10%に達するまでには約40年かかると試算した。
Anthropicは、ロボットの価格が人件費を下回るだけでは大規模な自動化は進まないとの見方を示した。導入費用に加え、保守・運用や設備変更に伴うコストも企業は考慮する必要があるためだ。
実質的な生産性向上につなげるには、ロボットが人間よりも大幅に低いコストで業務をこなせることが必要だとしている。
今回の分析は、AIとロボットの進展が労働市場に与える影響が、単純な技術的代替可能性だけでは決まらないことも示した。ロボットは多くの肉体労働を担える水準に近づいているが、実際に人員代替が進むペースは、技術力よりもコスト構造に左右される可能性が高い。