Microsoft共同創業者のビル・ゲイツ氏は、AIの普及はまず労働市場への影響や犯罪悪用といった副作用への対応が先行し、その後、ヒューマノイドロボットとの連携によって住宅建設や食料生産など実体経済に広がるとの見通しを示した。約20年に及ぶ「調整期」を経て、「豊穣の時代」に入る可能性があるという。
Business Insiderが27日(現地時間)に報じたところによると、ゲイツ氏はNBCの番組「Meet the Press」のインタビューで、AIの未来は2段階で進むとの認識を示した。
ゲイツ氏は、現在を第1段階と位置付ける。この段階では、AIは生活費の高騰や高額な医療費といった課題を解決する潜在力を持つ一方、そうした恩恵はまだ十分に現れていないとした。その一方で、労働市場の変化や犯罪への悪用といったリスクは先に顕在化し得ると指摘した。
同氏は「適切な安全装置がなければ、AIは労働市場を変え、犯罪者をより強力にしかねない」と述べたうえで、「おそらく20年程度の調整期間がある」と語った。
続く第2段階では、AIによる生産性向上の効果が社会全体に広がると予測した。AIとヒューマノイドロボットが組み合わされれば、住宅建設や食料生産など幅広い作業を担えるようになるという。ゲイツ氏はこれを「豊穣の時代」と表現し、大規模な物資不足が社会に与える圧力も和らぐ可能性があるとした。
もっとも、AIが普及した後も人間社会に残る課題はあると指摘した。新たに生まれた余暇をどう使うのか、人生の目的をどう見いだすのかを考える必要があるという。ゲイツ氏は「若い世代がどのような姿になるのかを決めなければならない」とし、「私の関心は、この混乱の時期を大きな被害なく乗り切れるかにある」と述べた。
AIには医療革新や生産性向上、景気の活性化、必需品価格の引き下げ、反復業務の自動化といった期待がある一方で、安全保障やセキュリティ面のリスクも浮上している。業界では、雇用減少や環境負荷、電力網への負担、著作権侵害、個人情報保護やサイバーセキュリティを巡る懸念も指摘されている。
実際、最近はAIによる不正アクセスの可能性を示す事例も相次いでいる。7月には、OpenAIのAIエージェントがテスト環境を抜け出し、AIプラットフォームのHugging Faceのシステムに侵入した。OpenAIはその後、この件に関連して、モデルが外部サービスの4つのアカウントにアクセスした事例もあったと発表した。
今月には、セキュリティスタートアップのHacktron AIの研究チームがAnthropicのClaudeを使い、OpenAI社員のアカウントを通じてOpenAIの社内コードリポジトリに到達できることを実証した。研究チームは実際の内部コードはダウンロードせず、アクセスを証明するため、社内リポジトリに無害なプルリクエストを提出した。OpenAIは脆弱性を修正し、研究チームに6500ドルのバグバウンティを支払った。
GoogleのGeminiも5月のセキュリティテストの過程で、実在する3社のシステムにアクセスした。Geminiは公開情報をもとに認証情報を入手するか、パスワードを推測してシステムに入り込み、実在企業だと認識した時点で作業を中断したという。
オーストラリアでも、AIエージェントによる政府システムへのアクセス事例が確認された。アンソニー・アルバニージー豪首相は24日、OpenAIのエージェントが6月、豪政府が運営するメディケア統計ポータルに無断でアクセスし、公開・非公開のファイルに到達していたと明らかにした。現在、追加被害の有無を調べている。
こうした状況を踏まえ、ゲイツ氏はAIの安全装置と規制の必要性を強調した。AIは「10億人の死を引き起こす事件を誘発しかねないほど強力だ」と警告し、「法執行当局や政策当局は、どのような安全装置や監視が必要かを議論すべきだ」と述べた。こうした措置は業界に一定の負担をもたらすものの、開発速度を劇的に鈍らせることにはならないとも付け加えた。
AI開発のスピードを巡っては、業界内でも意見が分かれている。Anthropicのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)は今月、AIモデルの進化ペースを落とすべきだと訴え、OpenAIのサム・アルトマンCEOとイーロン・マスク氏も支持を表明した。
一方、米大統領府科学技術政策室(OSTP)のマイケル・クラツィオス室長は、企業が自ら危険だと判断する技術の開発を止めればよいとの立場を示している。同氏は今月、Fox News Sundayのインタビューで、「安全ではない、あるいは世に出したくない技術を開発しているなら、ただ止めればいい」と語った。