Palo Alto Networksのニケシュ・アローラ最高経営責任者(CEO)は、人工知能(AI)開発のペースを業界全体で一律に落とすべきだとする議論について、「現実的ではない」との認識を示した。開発速度そのものを抑えるよりも、製品投入前の安全確認と責任ある提供ルールの整備を優先すべきだと強調した。
米CNBCが9月24日(現地時間)に報じた。アローラ氏は、企業ごとに判断や行動が異なるため、業界横断で開発ペースをそろえて抑える枠組みは機能しにくいとの見方を示した。
CNBCのポッドキャストに出演したアローラ氏は、「すべての企業が自発的に歩調を合わせるわけではない」と指摘した。一部企業が先行する可能性が高いとして、最前線でAIを開発する企業を一律に止めるべきではないと主張した。
その一方で、製品については投入前に安全性を十分に確認したうえで提供すべきだと述べた。
こうした発言の背景には、AIの安全性と開発スピードを巡る業界内の議論の高まりがある。これに先立ち、Anthropicの研究者は、AIが人類を絶滅に追い込む確率が10%に達する可能性があるとの見方を示していた。
また別の研究者は、AnthropicとOpenAIが責任ある行動を取っていないとして退社したと明らかにした。その後、Anthropicのダリオ・アモデイCEOは、AIモデルの性能向上ペースを落とすべきだとする文章を公表した。
この考えには、サム・アルトマン氏、イーロン・マスク氏、デミス・ハサビス氏も支持を示した。
アローラ氏は、こうした減速論について、規制当局や立法府の共感を得る狙いと受け取られかねないとの見方も示した。過去にX(旧Twitter)で関連する主張を「ニンジャ・ムーブ」と表現した理由についても、インタビューで説明した。
AI企業が規制当局や政界の同情を集め、責任追及を事実上免れようとしているように見えたためだという。
ただ、同氏は現時点で重要なのは減速そのものではなく、安全な提供基準の整備だと改めて強調した。「安全でないと判断されるなら、製品を出すべきではない」と述べた。
さらに、AI開発の速度を検証する基準や試験体制をどう構築するのかも不明確だと付け加えた。
AIが人類を絶滅させるとの警告については、可能性は低いと評価した。人類が滅ぶ確率が10%に上るとの主張にも同意せず、「その確率は小さい。極めて小さい」と語った。
そのうえで、モデルが適切な目的で使われるよう、ガードレールや安全対策、セキュリティ対策を整えることが業界の役割だと述べた。
こうした見解は、他の業界関係者の発言とも重なる。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、新たな規制を設けるよりも、モデル開発企業が自社製品の安全性に責任を持つべきだと述べている。
米財務長官のスコット・ベッセント氏も、AI開発企業は政府による保護を期待するのではなく、自ら責任を負うべきだとの考えを示した。
一方で、アモデイ氏の提案には、AI開発速度を巡る国際協調や、中国との一定の協力も含まれる。これに対しアローラ氏は、そうした議論に入る前に、まず米国内で何を目指すのか整理すべきだとの立場を示した。
同氏は「米国の政界と企業経営陣の間でも見方は一致していない」としたうえで、「他国との調整を論じる前に、我々自身が何を望むのかをある程度まとめる必要がある」と述べた。
米国と中国はAIの主導権を巡って競争を続けている。米国は半導体などの中核技術で中国のアクセスを制限しており、これが両国の緊張の一因となってきた。
そうした中、AI開発の速度を巡る国際協調が実際に機能するのかは、今後も重要な論点となりそうだ。