写真はビットコイン。独税制改正案では、税率そのものに加え、取得費の立証負担の重さが焦点となっている。

ドイツで検討が進む暗号資産税制の見直しを巡り、個人投資家の負担増への懸念が強まっている。取得費を証明できない場合、資産価格が2倍になったとみなして課税所得を推計する案が浮上しており、Circleのパトリック・ハンセン氏は、個人投資家に不利に働く可能性があると警鐘を鳴らした。

ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが26日付で報じたところによると、ドイツ政府の税制改正案には、取得費を立証できない投資家に対し、資産価値が2倍になったと仮定したうえで「50%基準」を適用する内容が盛り込まれている。

ハンセン氏は、EUの暗号資産規制「MiCA」の枠組みで認可を受けた大手ステーブルコイン発行会社Circleの幹部。同氏は、この仕組みがとりわけ個人投資家に不利だと指摘した。

同氏は「この見直しは一般の利用者や投資家にとって大きな打撃になりかねない」としたうえで、「制度変更を認識していなかった人や、技術的な理由で取得費を十分に証明できない利用者が最も大きな影響を受ける可能性がある」と述べた。

争点となっているのは、取得費の立証に失敗した場合の扱いだ。改正案では、2026年末以降に取得した暗号資産について、取得費が確認できなければ価格が2倍になったとみなして課税所得を算定する仕組みが想定されている。

ハンセン氏は、ビットコインの年間下落局面やアルトコイン市場の低迷を挙げ、この前提は過大だとの見方を示した。「見直しがなければ、個人投資家が実態以上の税負担を負う可能性がある」とし、取得費を説得力をもって証明できないケースを特に問題視した。実際には生じていない利益に課税されるおそれがあるとも懸念を示した。

法律実務の側からも同様の指摘が出ている。Pöhlath法律事務所のディビッド・ホイチェル博士は、50%という数値自体はなお流動的としつつ、実際の利益がほとんどない取引でも、先行して重い税負担が生じる可能性があるとみている。

同氏は「既存保有分を守れるかどうかは、結局のところ信頼できる記録を残しているかにかかっている」と述べた。

このため、ドイツの暗号資産投資家の間では、取引記録の保管が大きな課題として浮上している。ドイツ財務省はこれまでに、取得日、数量、購入費用、取引手数料に加え、利用したプラットフォームやウォレットに関する記録を保存すべきだとの立場を示している。

税申告書や取引所の取引履歴、体系的に整理した個人のスプレッドシートも、立証資料として活用できるという。

改正案が原案通り実施されれば、新制度は2026年12月31日以降に取得した暗号資産に適用される見通しだ。2027年1月1日以前に取得した保有分には、おおむね現行ルールが維持される。源泉徴収方式の導入は2028年からと見込まれている。

投資家は今後、既存保有分と新規取得分を分けて管理する必要がある。複数の取引所をまたいで取引したり、自己保管型ウォレットを併用したりしている場合は、取得履歴の再構成にかかる負担が一段と重くなる可能性がある。

課税体系そのものも大きく変わる。ドイツ政府は、暗号資産のキャピタルゲインに一律25%の税率を適用する案を提案している。これに5.5%の連帯付加税が上乗せされるため、ビットコインとイーサリアムには実質26.375%が適用される計算になる。

現行制度では、ドイツの個人投資家がビットコインなどを現金化しても、課税されないケースが多いとされる。だが改正案が可決されれば、2026年末以降に新たに取得した資産は、保有期間にかかわらず課税対象となる。

もっとも、すべてのデジタル資産が同じ扱いになるわけではない。草案では、非代替性トークン(NFT)や一部のステーブルコイン、証券型トークン、実物資産連動型のRWAトークンは、引き続き課税対象外とされる。

一方、短期売買を行う投資家にとっては、一律課税の導入が有利に働く可能性もある。現在は最大45%の個人所得税率が適用されるためだ。

反対に、長期保有者への影響は大きい。現行の譲渡益非課税の優遇がなくなれば、例えば10万ユーロの長期キャピタルゲインに対し、税額は連帯付加税を含め約2万6375ユーロに達する。

ドイツ政府は、この制度変更により2028年に1億6000万ユーロの税収を見込み、2031年には年間最大3億5000万ユーロまで増えると試算している。

今後の焦点は、法案審議の過程でこの草案がどこまで修正されるかにある。足元の議論は税率そのものよりも、取得費を証明できない場合に適用される「50%基準」と、記録保存義務の重さに集まっている。

個人投資家にとっては、税制改正の行方にかかわらず、取引履歴を明確に残すことが事実上の必須条件になりそうだ。

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