Teslaの「FSD(監督型)」をEU全域で承認するかどうかを巡る採決が、少なくとも12月まで先送りされる見通しとなった。10月6日に開かれるEUの自動車技術委員会(TCMV)では採決は行われず、オランダが求める39条に基づく例外承認について追加協議する。
米電気自動車メディアのElectrekが25日(現地時間)に報じた。欧州委員会のDG GROWが公表した第119回TCMV会合の議題案では、関連項目は「オランダの39条承認要請に関する協議の継続」とされており、時間は午前11時45分から正午10分まで。Teslaの社名や採決案件としての記載はなかった。
TCMVの次回会合は12月に予定されている。このため、FSDをEUレベルで扱う採決も、最短で同時期になる公算が大きい。
争点となっている39条は、現行規制に適合しない新技術を例外的に認める仕組みだ。オランダの規制当局RDWは4月、この条項を用いて国内でFSD(監督型)を承認したうえで、その承認をEU全域に広げるよう欧州委員会に要請している。
今回の延期によって、Tesla側が示してきたスケジュールとのずれも改めて浮き彫りになった。Tesla Europeは9月1日、X(旧Twitter)への投稿で、FSDはすでに欧州5カ国で承認され、7万人超の顧客が利用しているとしたうえで、EU全域での採決が10月6日に行われる可能性があると説明していた。しかし、実際には議題から採決案が外れた。
EUの承認手続きは、加盟国の単純過半数では決まらない。オランダの要請が可決されるには、27加盟国のうち15カ国以上の賛成に加え、賛成国の人口合計がEU全体の65%以上を占める必要がある。
現時点でオランダの承認を自国でも認めているのは、デンマーク、ベルギー、エストニア、リトアニア、スロベニア、チェコの6カ国で、オランダを含めると計7カ国となる。ただ、人口比では約12%にとどまる。
一方で、反対・慎重論も根強い。スウェーデンは、Teslaが制限速度を超えて走行できるようにする機能を削除しない限り、FSDを受け入れるべきではないとの立場を示した。北欧の規制当局は、凍結路面での運用や、運転者の注意を維持できるかといった点も問題視している。フランスも、都市部での速度超過や運転者の注意義務を理由に、オランダの承認を認めていない。
外部試験の結果も逆風となっている。ブリュッセルの歩行者安全団体は今週、すでにFSDを承認した国で実施した試験の結果として、同システムが制限速度30km/hの区間で55%の割合で速度超過していたと発表した。
採決の行方は主要国の判断に大きく左右される。フランスはすでに反対しており、ドイツ、イタリア、スペインはオランダの承認をまだ認めていない。これら4カ国でEU人口の約58%を占めるため、Teslaがこのうち一部の賛同を得られなければ、65%の人口要件を満たすのは事実上難しい。
Teslaは昨年11月、オランダでの承認時期を2026年2月ごろと見込んでいたが、当時RDWはこれを否定した。その後、目標時期は4月10日にずれ込み、オランダ国内での承認は実現した。
ただ、イーロン・マスクが言及した「2026年夏の欧州全域投入」という見通しは、6月のTCMV協議でも採決に至らず、今回も改めて先送りとなった。欧州でのFSD拡大には、日程の遅れだけでなく、速度規制や運転者の注意義務を巡る規制上の対立を解消できるかが引き続き問われている。