KakaoのAI戦略が、独立型アプリの展開からKakaoTalkを軸にしたサービス連携へと重心を移している。個別のAIアプリを育てるよりも、KakaoTalk内でAIと既存サービスを結び付ける方向にかじを切る構えだ。
その方針を具体的に示す場となるのが、10月に開く開発者カンファレンス「if(kakao)26」だ。昨年はKakaoTalkとAIの結合可能性を打ち出したが、今年はAIが利用者と複数のサービスをどうつなぐかが焦点となる。
業界関係者によると、Kakaoは10月13日〜14日に京畿道竜仁のKakao AIキャンパスで「if(kakao)26」を開催する。テーマは「すべての接続に知能を」。初日はチョン・シナ代表が「みんなのための接続、1人のための知能に」をテーマに基調講演を行う。
Kakaoは、昨年ベータ版として投入した独立型AIサービス「Kanana」について、アプリ版とPC版を10月15日に終了する。日程は「if(kakao)26」の翌日に当たる。
Kananaの運用を通じて得た技術や利用者のフィードバックは、他のAIサービスに反映する。独立型のKananaは終了する一方で、「Kanana in KakaoTalk」を含む他のAIサービスは継続する。
独立型AIアプリは、ChatGPTなどのグローバルサービスと利用者獲得や利用時間を巡って直接競争しなければならない。これに対し、Kakaoは日常的なコミュニケーション基盤としてKakaoTalkをすでに持つ。新たに別アプリへ利用者を呼び込むより、既存プラットフォーム内でAIの接点を広げる方が、同社の強みを生かしやすい。
実際、足元のKakaoのAIサービスはKakaoTalkを中心に設計されている。「Kanana in KakaoTalk」は友だちタブから利用でき、オンデバイスAIモデルで会話の文脈を理解し、必要な情報を先回りして提案する「先トーク」を提供する。
機能面では、スケジュールのブリーフィングや情報検索、商品・場所の推薦、KakaoTalkの設定変更などを支援する。今後は、利用者の意図を把握して商品やサービスを提案し、購入までつなぐエージェント型AIへ高度化する計画だ。
同様の流れは他のサービスにも見える。Kakaoと行政安全部が提供した「AI国民秘書」は、KakaoTalk上で公共施設の検索・予約や電子証明書の発給を可能にした。Kakao Toolsも、Kakao内外のパートナーサービスをつなぎ、利用者の要望を実行に結び付ける役割を担う。
AIの役割が単なる「会話相手」から「サービスをつなぐ窓口」へ広がれば、KakaoTalkの位置付けも変わる可能性がある。利用者が自ら必要なサービスを探すのではなく、AIが会話の文脈を踏まえて必要な機能を呼び出す形だ。
こうした方向性は、「if(kakao)」の変化からも読み取れる。Kakaoは昨年の「if(kakao)25」で「可能性、日常になる」を掲げ、「Kanana in KakaoTalk」、独自AIモデル、PlayMCPなどを公開し、KakaoTalkとAIの融合を前面に押し出した。
今年はそこから一歩進み、利用者の文脈を複数のサービスやエージェントの間でどうつなぐかに重点を移す。初日には、AIが利用者の文脈を理解する仕組み、サービス間で情報を連携するAIメモリー、KakaoTalkで使えるAIアシスタント、エージェント間接続などを扱うセッションを予定している。
昨年が「KakaoTalkでAIをどう使うか」という土台作りの段階だったとすれば、今年はAIを通じてKakaoTalkと複数のサービスを一つの利用フローに束ねる段階に入るとみられる。
結局のところ、KakaoのAI戦略の成否は、独立したAIサービスをどこまで拡大できるかではなく、KakaoTalkを通じてAIと既存サービスをどれだけ自然に結び付けられるかにかかっている。検索や推薦から実際のサービス利用までつながれば、KakaoTalkの役割は単なるコミュニケーション基盤を超え、AIとサービスを結ぶ接点へと広がる可能性がある。
業界関係者は「KakaoTalkの利用者基盤そのものは強みだ。ただ、AIが単純な推薦にとどまらず、実際の購入や予約といった行動につながるかどうかが、事業面では重要になる」と話した。