中国の人工知能(AI)モデルの性能向上について、知識蒸留だけでは説明しきれないとの見方が米AI業界で強まっている。米CNBCが18日(現地時間)に報じたところによると、Cohereの最高経営責任者(CEO)エイダン・ゴメズ氏は、中国のAIモデルを「世界トップ水準」と評価し、米国の先端AI研究機関が持ってきた優位性は急速に縮小しているとの認識を示した。
知識蒸留は、高性能なAIモデルの出力結果を使って別のモデルを学習させる手法だ。米企業やワシントンでは、中国の研究機関がこの手法で競争力を高めているとして、無断利用や盗用に当たると批判する声が出ていた。
ただ、ゴメズ氏は中国の足元の成果を、それだけで説明するのは難しいと指摘した。一部で模倣や蒸留に頼った側面はあるものの、それとは別に独自の高い技術力を築いてきたという。
さらに同氏は、中国の最新モデルの一部が、特定のベンチマークや能力面で米国の最先端モデルを上回ったと述べた。模倣や蒸留だけで差を縮めることはできても、先行することは難しいと強調している。
こうした見方は、米政府や一部AI企業の主張とは温度差がある。Anthropicはこれまで、中国のAI研究機関による蒸留の利用は盗用に当たると繰り返し主張してきた。
今月には、Anthropicの脅威インテリジェンス責任者ジェイコブ・クライン氏が、Claudeなどのモデルにアクセスしようとする不正なエコシステムが存在すると説明した。Anthropicは別の報告書でも、Alibaba、Moonshot、DeepSeekが自社モデルの学習に向けて「違法な蒸留」を試みたと主張している。
米サイバーセキュリティ・インフラ安全保障局(CISA)も今月初め、中国のAI企業が産業規模の知識蒸留を通じて、米AI企業のモデルの機能や能力を体系的に抽出しているとの見方を示した。あわせて、これは補助的な手法ではなく、開発戦略の中核に位置付けられているとした。
一方、米国内では蒸留の概念をもっと広く捉えるべきだとの意見もある。ホワイトハウスでAI政策顧問を務めたスリラム・クリシュナン氏は17日、ChatGPTやClaudeのようなサービスも、インターネット上にある人間のコンテンツを学習して構築されており、蒸留はコンピュータサイエンスの中核的な考え方の一つだと述べた。
クリシュナン氏はまた、中国の研究機関が蒸留を使っていたとしても、それがモデル性能の向上にどこまで寄与したのかは明確ではないとの見方を示した。
これに対し、中国政府は米国側の主張を否定した。中国商務部の報道官は、米国が提起した産業規模の蒸留に関する主張について、根拠を欠き、法的にも妥当ではないと反論した。
もっとも、中国AIの進化は先端半導体へのアクセス制限下でも続いている。中国はNVIDIAなどが供給する最先端チップへのアクセスが制約されるなか、自国の半導体開発を拡大してきた。
Counterpoint Researchのパートナー、ニール・シャ氏は、チップ規制によって中国の開発者は限られた計算資源でより効率的なアーキテクチャを設計せざるを得なくなったと指摘する。これを単なる模倣とみなせば、競争の実態を見誤ることになるという。
ゴメズ氏も、西側の政策決定者が中国の技術力を過小評価しているのではないかとの問いに対し、「その通りだ」と答えた。