EASA報告書は、SAF義務混合が市場拡大に効果を示す一方、原料調達と投資面の脆弱さも浮き彫りにした(写真=Shutterstock)

欧州連合(EU)の持続可能航空燃料(SAF)義務混合は、施行初年度から目標を上回った。供給比率は2.8%に達し、市場拡大を後押しした一方で、廃食用油など輸入原料への依存や、合成航空燃料(e-SAF)への投資の遅れが中長期の課題として浮上している。

CleanTechnicaが18日(現地時間)に報じたところによると、欧州航空安全機関(EASA)が公表した「2025 RefuelEU Aviation Annual Technical Report」で、EU域内の空港に供給されたSAFは約110万トンだった。航空燃料供給全体の2.8%に当たり、初年度の義務目標である2%を上回った。

SAF比率は2024年の0.6%から大きく上昇した。規制に基づく混合義務が、実際のSAF需要と供給の拡大を促した格好だ。

一方、供給原料は特定品目に偏っている。現在、EUで供給されるSAFの大半は、廃食用油と動物性脂肪を原料とするHEFA方式で生産されている。

内訳は、廃食用油が供給量の約80%を占め、カテゴリー3動物性脂肪が11%、パーム油工場廃水(POME)由来燃料が約6%だった。

原料の輸入依存も強まっている。SAFそのものは84%がEU域内で精製されたが、生産に使われた原料の85%は域外からの輸入だった。前年の69%からさらに上昇しており、中国が主要な供給元の1つとされた。

業界では、こうした構造が長期的なSAF供給の安定性を損ないかねないとの見方が出ている。

カミユ・ミュトレル航空政策マネジャーは、欧州が供給量に限りがあり、持続可能性に関する検証も厳しさを増す輸入原料に大きく依存していると指摘したうえで、現行の構造では欧州の航空脱炭素化を支える長期戦略として不十分だとの認識を示した。

最大の課題として挙がっているのが、e-SAF投資の不足だ。EASAによると、欧州では約60件のe-SAFプロジェクトが開発段階にあるものの、最終投資決定(FID)に至った案件はない。

e-SAFは、再生可能エネルギー由来の電力などを活用し、水素と炭素を組み合わせて製造する合成燃料を指す。

EASAは、EUが今後e-SAFの導入比率を段階的に引き上げるには、公表済みプロジェクトを実際の生産設備建設や投資実行の段階へ移す必要があるとみている。

市場では、規制緩和よりも投資の不確実性を下げることが重要だとの見方が広がっている。業界は、既存規制の弱体化や目標引き下げではなく、初期プロジェクトの採算性を見通せる制度設計が必要だと主張している。

その文脈で言及されているのが、ドイツが進める両方向オークションの実証事業だ。政府が生産者と需要家の間の価格リスクを一部軽減することで、初期の商用e-SAFプロジェクトの資金調達を後押しできるという。

EU執行委員会も、持続可能燃料と合成燃料を対象に、EUレベルでの両方向オークション導入を検討している。

原料の多様化も主要課題の1つだ。廃食用油など輸入の廃棄物由来原料への集中を改めることができれば、供給安定性と持続可能性を巡る論争の双方を和らげられるためだ。

EU執行委員会が2030年から、廃食用油由来SAFに対するEU排出量取引制度(EU ETS)の支援を段階的に縮小する案を示したのも、こうした問題意識に沿う動きといえる。

今回のEASA報告書は、SAF義務混合が短期的な市場拡大には効果を発揮した一方で、長期的には原料サプライチェーンの脆弱さとe-SAF投資の停滞という課題に直面していることを示した。

EUが航空部門の脱炭素化目標を維持するには、SAF供給量の拡大に加え、生産方式と原料構成の転換も求められそうだ。

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