写真=Stellantis

Stellantisは、運転席やキャビンを備えない自動運転配送EVコンセプト「BOW」を披露した。貨物スペースを重視した設計が特徴で、ラストマイル配送のほか、工場や病院、空港など運行範囲を管理しやすい環境での物流利用を想定している。

電気自動車専門メディアのCleanTechnicaによると、Stellantisは17日(現地時間)に、商用車部門のStellantis Pro Oneと自動運転・ロボティクス企業UQI Roboticsが共同開発したBOWを公開した。

BOWは「Box-on-Wheels」の略。4輪の上に貨物ボックスを載せたような外観を採用し、一般的な配送バンとは異なり、運転席やキャビンを持たない。車両前方を含む車内の大半を荷室として使える構造とした。

車体にはカメラや各種センサーを搭載し、ルーフ上には大型のセンサーユニットを配置した。これらを組み合わせることで周辺環境を認識し、無人での走行を可能にする自動運転システムを構成する。

特徴は、既存の商用車に自動運転機能を後付けするのではなく、当初から無人運行を前提に車両を設計した点にある。従来の配送バンは運転席や乗員スペースを確保する必要があるが、BOWはその空間を不要とすることで、車両全体をより積載重視の構造に振り向けた。

もっとも、BOWは量産を前提とした市販車ではなく、開発段階のコンセプト車という位置付けだ。バッテリー容量、1回の充電当たりの航続距離、最大積載量、最高速度、充電時間といった具体的な仕様は公表していない。量産時期や販売計画も明らかにしていない。

このため、市場で取り沙汰されている具体的な性能値については、現時点で確認された情報とは言えない。既存のStellantis製電動バンのバッテリーやモーターをBOWに流用するかどうかも不明だ。

想定する運用環境は、一般的な都市部の公道全体というより、運行エリアを限定しやすい空間に重点を置く。Stellantisは主な活用先として、工場や病院、空港を挙げている。

こうした環境では、走行エリアを事前に設定し、道路や移動経路を地図化しやすいため、自動運転システムが対応すべき変数を相対的に減らせる。一方で、歩行者や自転車、違法駐停車、道路工事など予測しにくい要素が多い都市部では、より高度な自動運転技術が求められる。

BOWはラストマイル配送も視野に入れる。物流拠点から最終目的地までの輸送で無人運行が実現すれば、配送オペレーションそのものを見直す余地が生まれる。車両運行をドライバーの勤務時間に合わせるのではなく、貨物の移動や物流拠点の稼働に合わせて再設計できるためだ。

ただ、自動運転車を実際の物流現場に投入するには、なお多くの課題が残る。決められた経路を走るだけでなく、積み込みや荷下ろし、例外対応、安全管理まで含めた物流運用全体の自動化が必要になる。

今回の取り組みでは、UQI Roboticsが自動運転とロボティクス技術を担い、Stellantisが商用車開発と物流運用の知見を持ち寄る。両社はBOWを単なる自動運転技術のデモ車にとどめず、実際の商用環境で活用できる物流プラットフォームへ発展させる可能性を探っている。

BOWがIAA Transportation 2026で注目を集めた背景には、従来の電動商用車とは異なる設計思想がある。電動バンや電動トラックの多くが、内燃機関車の基本構造を維持したまま電動化を進めてきたのに対し、BOWは無人運行を前提に車両の形そのものを見直した。

現時点のBOWは、近く発売される配送EVというより、自動運転時代の商用車のあり方を示す概念実証に近い。運転者空間を完全に排し、積載スペースを最大化した構造と、自動運転技術や電動パワートレインをどう実用化につなげるかが今後の焦点となる。

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