OpenAIは17日、法務業務に特化した人工知能(AI)製品「Astra for Law」を発表した。最新モデル「GPT-6 Astra」に法令・判例検索機能と、法務分析や文案作成向けのガイダンスを組み込み、当初は米大手法律事務所やリーガルテック企業を主な対象として提供する。
Astra for Lawは独立した新モデルではなく、GPT-6 Astraを法務向けに最適化した製品。米国の判例、法令、規則、裁判所規程、行政決定を対象とする検索インデックスと、法務分析・起案向けの指針を統合した。
検索インデックスは2億3000万件超のURLを対象とし、資料を日次で追加する。判例データには、非営利団体Free Law ProjectのCourtListenerデータベースを活用する。
法務リサーチ性能は、従来のGPT-6 Astraを上回った。OpenAIがVals AIの「Legal Research Bench」の非公開検証データセットを使い、米国法務リサーチに関する200件の質問で評価したところ、Astra for Lawの総合正確性は54%だった。Web検索のみを用いたGPT-6 Astraは38.7%で、推論レベルはいずれも最高水準と評価された。
判例に関する質問では、Astra for Lawの方が参照すべき判例の抽出件数が24%多かった。別の監査評価では、正確な判決文から目的の文言を抽出する性能が最大54%高かった。回答文の長さも、従来のGPT-6 Astraの平均約2倍に達したという。
提供開始当初の利用先は限定する。米大手法律事務所上位200社を指す「AmLaw 200」を中心に選定した事務所が、Trusted Accessプログラムを通じてChatGPTとCodexで利用できる。モデル選択画面では「GPT-6 Astra Law」と表示される。
API版「gpt-6-astra-law」は今後提供する予定だが、時期と価格は明らかにしていない。法務AI企業のHarveyとLegoRadoは、API利用企業として参加する。
セキュリティとガバナンス機能も強化した。対象の法律事務所には、APIでデータを保存しないポリシーを適用する。ChatGPT Enterpriseについても、利用内容は原則としてOpenAI社員による人手レビューの対象外とする。
OpenAIは法律事務所Latham & Watkinsと連携し、情報アクセス権限やエシカルウォール、顧客向けガイダンスを含むガバナンス体制を設計している。
法務向けプラグインのエコシステムも拡充した。提供開始に合わせて26のパートナープラグインを用意し、Relativity、Clio、iManage、DeepJudgeなどの法務ツールをChatGPTと連携できるようにした。
Thomson Reutersは、HighQの案件関連情報をChatGPTと連携させるほか、CoCounsel Legal向けコネクターも投入する予定だ。弁護士やリーガルエンジニアが作成したコミュニティプラグイン9件に加え、47のカスタム機能も提供する。文書校正、修正提案、書式エラー確認などに対応する「ChatGPT for Word」も同日、正式提供を開始した。
Thomson Reutersの最高技術責任者(CTO)、ジョエル・フロン氏は、AIと法務ツールをつなぐだけでは不十分だと指摘した。信頼できる情報、企業や案件の文脈、法務特化機能、高リスク業務に必要なガバナンスが重要だとしている。
OpenAIは個別の法律事務所にエンジニアを配置し、各社の知見や業務プロセスに合わせたツール開発も進めている。米大手法律事務所Sullivan & Cromwellは、自社の交渉ガイドラインと選別した判例を活用し、新規取引の検討や修正案の提示を行う契約分析ツールを構築した。
Ropes & Grayは取引デューデリジェンス向けに活用し、Cooleyは新規株式公開(IPO)の準備や届出書作成に使う「Go Public」を開発した。
OpenAIの法務市場参入は、競合Anthropicの動きとも重なる。Anthropicは5月に法務特化製品を発表しており、両社とも法務ツールや外部サービスとの連携拡大を進めている。OpenAIはこれに先立ち、金融サービス、教育、臨床、生命科学研究など、特定業界向けの製品も相次いで投入してきた。
OpenAIは今回の投入を、法務分野への長期投資の起点と位置付ける。GPT-6 Astraの提供開始から約2週間で、法務専用構成へと展開を広げた形だ。