全固体電池の量産体制構築を進めるFactorial Energy。写真=Factorial Energy

米国の全固体電池スタートアップ、Factorial Energyは9月17日、三井金属と提携し、硫化物系固体電解質を用いた全固体電池の量産拡大を進めると発表した。自社の全固体電池プラットフォーム「Solstice」と三井金属の材料技術を組み合わせ、素材調達と量産体制を同時に強化する。適用先は電気自動車(EV)にとどまらず、航空宇宙、防衛、ロボティクス分野にも広げる方針だ。

EVメディアElectrekによると、今回の提携では、Factorial Energyの「Solstice」と三井金属の硫化物系固体電解質技術を統合し、全固体電池の商用化に向けた生産拡大を後押しする。

Factorial Energyはこれまで、固体電池と半固体電池を開発してきた。独自技術「FEST」と「Solstice」を軸に、全固体電池の商用化で最大の課題の一つとされる量産の壁を突破することを目指している。

Factorial Energyの最高経営責任者(CEO)、シユ・ファン氏は、電池は電動化社会を支える中核技術である一方、なお重要な技術課題が残っていると説明した。その上で、電池の革新は1社だけでは実現できないとして、業界横断の基盤づくりの重要性を強調した。

三井金属は、全固体電池向けの硫化物系固体電解質を手がける。アルジロダイト系硫化物固体電解質「A-SOLiD」を開発し、埼玉県の専用生産拠点で量産を進めている。

硫化物系固体電解質は、全固体電池でイオンを伝導する中核材料とされる。Factorial Energyは三井金属との提携により、「Solstice」に必要な材料の供給基盤を強化し、グローバルでの量産拡大を支える体制を整える考えだ。

同社は生産と事業拡大も急いでいる。POSCO Future MとIQTから出資を受け、今年1月には乗用車向けで初の商用受注を確保した。7月には航空宇宙分野でも初受注を獲得し、全固体電池の適用領域をEV以外の産業へ広げている。

完成車メーカーとの連携も続けている。Factorial EnergyはMercedes-Benz、Stellantis、Hyundai MotorとEV向け全固体電池の開発を進めてきた。今年初めにはKarma Automotiveと協力し、米国初の商用全固体電池プログラムを開始した。

7月にはSK Onと業務協約を結び、Factorial Energyの全固体電池セル技術をSK Onのグローバル生産ネットワークに適用する方策を進めることで合意した。

性能面でも商用化に向けたデータを示している。Factorial Energyによると、「Solstice」のエネルギー密度は最大450Wh/kgで、従来のリチウムイオン電池に比べて約80%高い。摂氏90度の環境でも安定性を維持できるとしている。

実車試験も進む。Mercedes-Benzは、Factorial Energyの全固体セル106個を搭載した改造型EQSで1200km超を走行したと明らかにした。Stellantisも北米でDodge Charger Daytonaの試作車にFESTセルを採用し、公道試験を実施した。

Stellantisは昨年、Factorial Energyの77AhのFESTセルについて、600回超の充放電サイクルで375Wh/kgのエネルギー密度を達成したと公表した。このセルは15%から90%まで18分で充電でき、氷点下30度から45度までの温度帯で性能を維持したとしている。

Factorial Energyは昨年12月のインタビューで、同社の全固体EV電池が早ければ2027年にもEVへ搭載可能になるとの見通しを示していた。初期の採用先は、大衆向けEVより高性能車やプレミアムEVになる可能性がある。

今回の三井金属との提携は、全固体電池の商用化で鍵を握る材料供給と量産工程の強化を同時に進める取り組みといえる。Factorial Energyは完成車メーカーに加え、材料メーカーとの連携も広げており、量産時期と実装時期をどこまで前倒しできるかが焦点となる。

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