SpaceXの長期投資家であるValor Equity Partnersが、保有株の一部を売却せず、有限責任出資者(LP)に現物で分配した。規模は約85億ドル(約1兆2750億円)に上る。
米ITメディアTechCrunchが16日(現地時間)に報じたところによると、ValorはSpaceX保有株の8.5%をLPに移管する方式を採用した。現金化ではなく株式そのものを引き渡す形で、投資収益を還元する。
今回の取引は、アントニオ・グラシアスが設立したValorが、SpaceX投資で得た大きなリターンをどのように投資家へ配分するかを示す事例といえる。グラシアスはイーロン・マスクの長年の支援者として知られ、現在はSpaceXの取締役も務めている。
Bloombergが確認した米証券取引委員会(SEC)への開示資料によると、Valorは長年にわたりSpaceXに投資してきた。その結果、IPO時点でグラシアスが支配する法人は5億株超のSpaceX株を保有していた。6億株超を保有していたマスクに次ぐ規模だったという。
今回LPに分配された株式の価値は約85億ドルと推計される。一方、分配後もValorは4億6000万株超を保有し続ける見通しだ。SECの公開資料にも、分配後に4億6000万株超を保有すると記載されている。
今回のポイントは、現金配当ではなく株式の所有権を移した点にある。TechCrunchは、SpaceX株を直接受け取ることで、ValorのLPにとって税務面で有利に働く可能性があると指摘した。
市場の観点では、大量売却を避けた点も注目される。保有株を市場で一括売却していれば、流通株が急増し、株価の下押し要因になり得たためだ。報道では、「巨額の株式を公開市場に放出することを避けた」とし、市場で売却可能な株式が過剰になれば価格下落につながる可能性があると伝えている。
こうした判断の背景には、足元のSpaceX株の値動きもある。SpaceXは大型IPO以降、すでに約10%下落している。こうした局面で追加の大口売りが出れば、値動きが一段と荒くなる可能性があり、Valorは市場への衝撃を抑える手法を選んだとみられる。
今回の措置は、SpaceX投資の成果を実現しつつ、保有比率の急低下を避ける一種の折衷策といえる。LPは現金ではなくSpaceX株を受け取り、Valorは4億6000万株超の大口持ち分を維持する。主要株主による資金回収の手法と、未上場企業または上場直後の成長企業における株式流通戦略を示す事例として注目されそうだ。