米上院は15日、暗号資産市場構造を定める「CLARITY法案」の討論終結動議の採決を否決した。法案は直ちに廃案となるわけではなく、手続き上は再採決の余地を残したものの、休会日程の制約に加え、民主党が追加修正を求めていることから、年内成立は一段と見通しにくくなっている。
Cointelegraphによると、採決結果は賛成49、反対50だった。今回の投票は法案そのものの可否を決める最終採決ではなく、討論を打ち切って次の審議手続きに進むためのもので、可決には60票が必要だった。
焦点となったのは、共和党のトム・ティリス上院議員の対応だ。同議員は当初賛成票を投じた後、反対票に変更した。
これは法案への反対というより、再考動議を提出できる手続きを残すための措置とみられている。このため、CLARITY法案は今回の否決で完全に道が閉ざされたわけではなく、討論終結動議の採決が改めて行われる可能性が残った。
もっとも、残された時間は多くない。上院は10月2日から休会に入り、中間選挙後に審議を再開する見通しだ。
下院もすでに選挙期間中の休会に入っており、年末までに法案を上下両院で通過させるハードルはさらに高まった。2025年7月に下院でCLARITY法案を支持した民主党のシュリ・タネダール下院議員は、こうした日程上の制約について、合意形成に向けた「重大な障壁」だと指摘した。
一方、再採決で流れが変わった前例もある。ステーブルコイン関連のGENIUS法案は、2025年5月の初回の討論終結動議の採決で48対49で否決されたが、11日後の2回目では66対32で可決し、翌月に上院を通過した。
CLARITY法案についても、選挙後のレームダック会期で再び審議が進む可能性はある。ただ、現時点で直ちに採決に持ち込めるような合意形成には至っていない。
政治面のハードルも残る。今回の討論終結動議の採決で賛成した49人に、民主党の上院議員は1人も含まれていなかった。
ただし、民主党が法案自体を見限ったわけではない。翌日には民主党の上院議員7人が、CLARITY法案の超党派成立に向けた取り組みを続ける考えを明らかにした。
争点は、暗号資産規制を整備すべきか否かではなく、現行案が超党派の支持を得るのに十分な内容かどうかにある。共和党は採決前までに、民主党が求めた126件の実質的な修正を反映したという。
修正内容には、公職者が暗号資産事業を通じて利益を得ることへの規制強化や、一部の倫理条項について州司法長官にも執行権限を認める案が盛り込まれた。
それでも民主党は、ドナルド・トランプ米大統領を巡る暗号資産分野での利害関係を踏まえ、より強い倫理面の歯止めが必要だと主張している。タネダール下院議員は、大統領が私的利益のために権限を行使することを防ぐ仕組みをさらに強化すべきだと述べた。
同議員はまた、トランプ大統領が年次の資産公開で、2025年の暗号資産関連収益として少なくとも14億ドル(約2100億円)を申告した点にも言及した。そのうえで、大統領の説明責任を問うとともに、デジタル資産市場を守るためのガードレールが必要だと訴えた。
追加交渉の論点も残っている。暗号資産投資会社MV Globalの創業者、カイル・シャセ氏は、ステーブルコインの報酬に上限を設けることや、収益面に制限を設けること、不正資金対策や州政府の執行権限を強化することが、一部の民主党議員や銀行業界の支持を取り付ける条件になり得るとの見方を示した。
一方で、セルフカストディや開発者保護に関する条項については、業界が安易に譲歩すべきではない領域だとした。非カストディアル型の開発者を、金融規制やマネーロンダリング防止義務からどこまで保護するかを巡っても、これまで交渉が続いてきたという。
仮にCLARITY法案の審議が議会で足踏みしたとしても、米国の暗号資産規制の整備が止まるわけではない。ストラテジーのマイケル・セイラー取締役会議長は、米証券取引委員会(SEC)や商品先物取引委員会(CFTC)、米財務省が現行法に基づいて規制整備を進めることは可能だと指摘した。
もっとも、行政府や規制当局による措置は、法律の制定とは異なり、将来の政権交代で変更される可能性がある。
CLARITY法案は、手続き上なお上院で再び扱われる可能性を残している。ただ、可決に必要な60票までなお11票足りない。民主党が求める倫理条項や追加修正をどこまで盛り込めるかが、今後の交渉の最大の焦点となる。