写真=Shutterstock

SpaceXとxAIの統合組織が、破産したスタートアップの顧客情報や社内記録を取得し、AIモデル「Grok」の学習に活用する案を内部で検討していたと報じられた。協議は非公式な段階にとどまっており、実際の取引に至らない可能性もあるという。

Decryptが9月17日(現地時間)に報じた。検討主体は、SpaceXとxAIが2月に統合して発足した「SpaceXAI」。稼働中の企業からデータ利用の許諾を得るのではなく、すでに事業を閉じたスタートアップが保有していたデジタル資産に着目しているとされる。対象は顧客ファイルにとどまらず、企業運営の過程で蓄積された各種記録にも及ぶ。

狙いは、Grokの学習データ拡充とみられる。AIモデルの性能はテキストやコード、業務記録などの質と量に大きく左右される。一方、実在企業のデータは、公開Web上の情報に比べて取得コストが高まっている。このため、破産企業の記録が相対的に安価なデータソースとして注目されている。

同様の先例もある。Googleは今年、経営破綻した格安航空会社Spirit Airlinesの内部記録を、破産競売を通じて1000万ドル(約15億円)で落札した。対象には約1億件の電子メール、5億件のMicrosoft Teamsメッセージ、数十年分の従業員ファイルが含まれ、AI学習基盤への組み込みが予定されていたという。

もっとも、この手法には個人情報と同意を巡る問題が直ちに伴う。Spirit Airlinesの事例では、客室乗務員の労働組合が破産裁判所に異議を申し立てた。氏名を削除する匿名化だけでは、10年分に及ぶ内部のやり取りから、誰が何を発言したかを再特定される恐れを十分に防げないと主張している。法的な争いは現在も続いている。

破産手続きでは、顧客データベースがオフィス家具などと同様に資産として扱われ、最高額の入札者に売却され得る点も論点だ。企業の消滅後は、顧客が異議を申し立てる相手そのものがいなくなる。報道によれば、SpaceXAIはこうした状況にあるスタートアップの運営データと顧客情報に関心を示していた。

SpaceX社内のデータ活用方針も、すでに一部明らかになっている。イーロン・マスク氏は8月の全社会議で、Grokが外部データの購入にとどまらず、SpaceXの社内記録も学習対象にしていく考えを示した。従業員に対しては、Grokが事実上「あなたたちの考えを受け継ぐことになる」と説明したとされる。

マスク氏はこれを問題ではなく機能として位置付けた。モデルが業務上の成果物だけでなく、従業員の視点や判断も取り込むことになるため、自分たちがそのモデルを育てていると考えてほしいと求めたという。ただ、どの範囲の従業員データが実際に使われるのか、どのような形で反映されるのかについての具体的な説明はなかった。

製品投入のスケジュールも背景にある。SpaceXは7月、xAIとの統合完了後の最初のモデルとして「Grok 4.5」を投入した。これに続き、マスク氏側の別の取引として600億ドル(約9兆円)規模のCursor買収と次期Grokの投入も予定されている。Grokの学習データの範囲をどこまで広げるのか、破産企業データの取得検討が実行段階に進むのかが、次の焦点となる。

キーワード

#SpaceX #xAI #Grok #生成AI #顧客情報 #プライバシー #破産資産
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.