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主要7カ国(G7)のサイバーセキュリティ実務グループは、各国政府と企業に対し、ポスト量子暗号への移行に早期に着手するよう求めた。実用的な量子コンピュータの登場時期はなお不透明だが、既存の公開鍵暗号を脅かし得る技術進展が想定以上のペースで進んでいるとの認識を示した。取引署名や資産管理に公開鍵暗号を用いる暗号資産ネットワークでも、量子計算への備えが新たな課題として浮上している。

Cryptopolitanが9月5日(現地時間)に報じたところによると、G7のサイバーセキュリティ実務グループは9月3日、「ポスト量子時代に備えて:行動の呼びかけ」と題する報告書を公表した。報告書では、量子コンピュータが既存の暗号を実際に無力化する前に、政府と企業がポスト量子暗号への移行を始める必要があると強調している。

G7は、量子コンピュータの実用化時期について具体的な工程表は示していない。一方で、広く使われる公開鍵暗号を解読し得る水準を見据えた技術開発は、足元でも進展が続いていると評価した。

とりわけ主要リスクとして挙げたのが、「いま収集し、後で復号する」攻撃だ。攻撃者が現在の暗号化データを保存し、将来、量子コンピュータの性能が十分に高まった段階で復号を試みる手口を指す。

ブロックチェーン業界でも、このリスクへの警戒は強まっている。ブロックチェーンは取引記録や一部の公開鍵情報が長期間残る構造にあるため、現時点で安全とされる暗号でも、将来的に量子コンピュータの攻撃対象になる可能性があるためだ。G7は、新たな暗号アルゴリズムの開発だけでなく、国家レベルの政策立案や研究、官民連携、ポスト量子技術を踏まえた調達基準の整備を一体で進めるよう勧告した。

欧州連合(EU)は、すでにより具体的な移行日程を示している。EUは昨年6月、ポスト量子暗号への移行に向けた共同実行ロードマップを導入し、加盟国に対して2026年末までに移行を開始するよう求めた。高リスクのシステムについては直ちに移行作業に着手し、2030年以前の完了を目標とする。ポスト量子対応は単なる技術選択を超え、サイバーセキュリティ規制や調達政策の領域にも広がっており、企業にとっても対応の遅れが規制順守や競争力の面で負担になりかねない。

主要なブロックチェーンネットワークでも、量子コンピュータ対策の検討が進み始めた。Bitcoinでは、長期的な量子攻撃リスクの抑制を狙うソフトフォーク提案「BIP-360」が俎上に載っている。量子コンピュータ攻撃に比較的弱いとされるTaprootのキーパス(key path)支出方式を見直す内容とされる。

もっとも、BIP-360だけですべての量子攻撃に対応できるわけではない。とくにメンプール上の取引を狙う攻撃への対策としては、ポスト量子デジタル署名の本格導入が必要になる可能性がある。BIP-360の有効化時期も現時点では決まっていない。

Ethereumは、より広範なアップグレードを視野に入れている。共同創業者のビタリック・ブテリン氏は2月に示したロードマップで、バリデーターのBLS署名、KZGコミットメント、ECDSAアカウント署名、アプリケーション層のゼロ知識証明を、ポスト量子方式へ移行すべき主要領域として挙げた。Ethereumは2029年までに中核となるポスト量子インフラを整備する計画だが、実際のネットワーク移行にはさらに時間を要する可能性も指摘されている。

大きな障壁の一つはコストだ。現在広く使われるsecp256k1ベースのECDSA署名は約64バイト規模だが、ポスト量子署名方式ではより大きなデータ容量が必要になり得る。米国立標準技術研究所(NIST)が標準化したML-DSA-87の署名サイズは約4627バイトで、過去のDilithium-5のパラメータセットでも約4595バイトの署名が用いられていた。

署名データが肥大化すれば、ブロックチェーンの保存容量やネットワーク帯域への負担が増し、取引処理コストの上昇につながる可能性がある。分散型ネットワークでは、ノード運用コストの増加がネットワーク構造そのものに影響を及ぼしかねない点も課題となる。

このため、暗号資産業界が直面する現実的なリスクは、量子コンピュータが直ちにBitcoinやEthereumを破ることそのものより、移行プロセスにあるとの見方も出ている。

具体的な課題としては、新たな署名方式を巡るコミュニティでの合意形成とプロトコル開発、署名データの肥大化に伴うインフラ負担、すでに公開鍵が露出している旧型ウォレットの扱いなどが挙がる。

量子コンピュータの進歩速度も重要な変数だ。Google Quantum AIは今年3月、256ビット楕円曲線暗号の解読に必要な資源が、従来の推定より大幅に少ない可能性があるとの研究結果を示した。Googleは、自社システムのポスト量子移行を2029年までに完了する計画も明らかにしている。

米国でも暗号移行基準の具体化が進む。NISTはIR 8547のドラフトで、2030年以降に112ビットの安全性水準のECDSAを段階的に退役させ、2035年以降はECDSAの使用を禁止する案を示した。

こうした動きは、暗号資産ネットワークにおける量子耐性の有無が、単なるセキュリティの問題にとどまらず、事業競争力や規制順守を左右する要素になり得ることを示している。

最終的に問われるのは、量子コンピュータがいつ既存暗号を破るかではなく、その前にどこまで迅速に移行を進められるかだ。今回のG7勧告を受け、BitcoinやEthereumを含む主要ブロックチェーンが、ポスト量子暗号への移行計画をどこまで具体化できるかが焦点となる。

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