写真=ノ・ギョンフン(AWS Korea金融事業総括)

AWS Koreaは8月27日、ソウルの大韓商工会議所で金融業界のAX(AIトランスフォーメーション)の動向や導入事例を共有する「AWS Financial Service Forum Seoul 2026」を開いた。会場では、金融各社の取り組みが概念実証(PoC)段階を越えて本番運用へ移りつつあることに加え、AX推進ではDX以上に経営陣の関与が重みを増しているとの認識が示された。

ノ・ギョンフンAWS Korea金融事業総括は基調講演と記者懇談会で、今年に入って金融業界でAIエージェントの実運用事例が増えていると強調した。

同氏は「PoCから実適用の段階に進むケースが増え、事業への影響が直接問われるようになった。AIへの関心はIT部門にとどまらず、複数の業務部門へ広がっている」と述べた。

事例として挙げたShinhan Cardでは、今年から顧客向けAIエージェント15件を順次公開しており、クレジットカードのレコメンドや外国人向けカード審査はすでに実用段階に入っているという。

銀行、カード、証券、生命保険、フィンテックなど金融全般で、これまでは「AIで何ができるか」を試す段階だったが、今年に入って関心の所在が変わったとの見方も示した。

具体的には、AIエージェントをどう安全に運用するか、各部門で多数開発されるエージェントの重複やサイロ化をどう防ぐか、さらにそれらをどう監視し統制していくかといった問いが大幅に増えたという。

基調講演と記者懇談会に同席したチェ・ギヨンAnthropic Korea支社長も、「他業種と同様に、金融各社でもパイロットやPoCにとどまらず、実業務への適用を本格的に検討する動きが広がっている」と述べた。

特に、顧客データを直接扱わない資産運用や商品設計の領域では、すでにAI活用が進んでいるとした。

AIを本番運用に載せるうえでの重要論点としては、セキュリティ、安全性、データの信頼性が挙がった。

チェ支社長は「国内では金融当局の規制順守とも直結するため、セキュリティと安全性は極めて重要だ」と指摘。Anthropicが「Constitutional AI」の原則を適用しているのも、安全性を担保するためだと説明した。

また、AIは結論に至った根拠を説明できる必要があり、本番運用ではセキュリティをどう確保するかが強く問われるとした。加えて、ビジネス目的に沿って実行され、成果につながっているかを判断する評価基準の整備も必要だと述べた。

ノ総括は、AI活用を支えるデータ整備の遅れも課題だと指摘した。

同氏は「ここ2〜3年でAIへの期待は大きく高まったが、IT部門がAIエージェントを作り、活用できる環境を整えようとしても、データがまったく準備できていないケースが多かった」と語った。

そのため、オントロジー構築や「AIレディデータ」プロジェクトが活発化しているという。

AXでは経営陣の関与の大きさも際立っている。チェ支社長は、金融業界ではAXに対する経営陣の関心が「個人的に驚くほど高い」との印象を示した。

同氏は「AIは経営トップ自らが掲げる重要アジェンダになった。CEO級の経営陣がバイブコーディング教育を直接受けるほど関心を示している」と述べた。

クラウド導入やデジタルトランスフォーメーションを推進していた時期と比べても、AIに対する経営陣の関心ははるかに強いという。

ノ・ギョンフンAWS Korea金融事業総括もShinhan Cardを例に、「会長レベルで数年前からエージェント活用を強調してきた」と明らかにした。

そのうえで「組織内ではAI関連の要望が相次いでおり、金融機関のIT部門には、安全かつ安定的にAIを利用できる環境整備が求められている」と述べた。高まる社内の期待を適切に管理し、必要な施策への理解を得るうえでも、経営陣の強い意思が重要だとした。

フォーラムにはHyundai Capitalのキム・ウヨンAI戦略室長も登壇し、自社のAX推進の経験を紹介した。キム室長も、全社的なAI転換には経営陣の役割が欠かせないと強調した。

同氏は「AXでは経営陣の関心が重要だ。全社的なAI転換は、特定の組織だけが頑張っても実現しない」と述べた。

Hyundai Capitalは昨年初めからAI転換を本格化し、社長を含む事業責任者全員が参加するAI専用ミーティングを毎月開いているという。

この会議では、AI技術のトレンドを共有するとともに、AI関連の優先順位や方向性が適切かどうかを議論する。経営陣の全面的な支援のもと、トップダウンで意思決定を進めたことで、中長期のAI転換マスタープランと詳細な実行計画を安定的に推進できたと説明した。

一方で、経営陣の関与に加え、現場の声を直接吸い上げることも重要だとキム室長は指摘した。

同氏によると、経営主導で1〜2年ほど取り組みを進める中で、現場の意見を十分に聞けているかという問題意識が生まれた。そのタイミングでAWSからバイブコーディングのハッカソン開催の提案を受け、実施に至ったという。

ハッカソンで最も重視した原則は、開発者中心ではなく、一般社員を主役にしたイベントにすることだった。

開発者はチームを組めないようにし、サポーターとしてのみ参加させた。参加募集に先立ち、オリエンテーションやワークショップも実施して関心を高め、この過程でAWSが教育を支援したという。

社長もオリエンテーションの段階から直接参加し、このイベントが社内で重要な意味を持つとのメッセージを発したとした。

ハッカソンの反応と成果は想定を上回った。キム室長は「当初は本選に進む課題は10件程度と見込んでいたが、実際にはそれを大きく上回る数のチームが応募した」と述べた。

受理したアイデアの多くが本選に進めるほど完成度が高く、このうち複数のチームは実際にハッカソン後もプロジェクトを継続したという。

当初は受賞チームの一部テーマだけをプロダクションレベルで開発する計画だったが、成果物の完成度が想定以上に高かったため、本選に進んだテーマの大半を来年の事業計画に反映することにしたと説明した。

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