AIドローンやスマートグラスを活用した視覚障害者向けの倉庫業務支援のイメージ。画像=ChatGPT

米国の物流倉庫で人手不足が深刻化するなか、視覚障害者の就労をAIで後押しする取り組みが注目を集めている。ドローンやスマートグラス、画面読み上げ技術の活用によって、これまで視覚への依存が大きかった倉庫業務の参入障壁が下がりつつある。

米Business Insiderが26日(米国時間)に報じたところによると、米インディアナ州のBosma Enterprisesは、AIドローンやMetaのスマートグラス、画面拡大ソフト、スクリーンリーダーなどを導入し、視覚障害者の物流・棚卸し業務を支援している。従業員の過半を視覚障害者が占め、インディアナ州で視覚障害者を最も多く雇用する企業の1つだという。

こうした取り組みの背景には、物流現場の旺盛な人手需要がある。米労働統計局(BLS)によると、6月の運輸・倉庫・ユーティリティ分野の求人件数は39万2000件と、前年同月から8万7000件増えた。HireQuestのリック・ハーマンズCEOは、「単純な労働力の減少というより、電子商取引の拡大が人手需要を押し上げている」と説明した。

Bosma Enterprisesが特に課題としていたのが棚卸し業務だ。商品の位置やバーコードを目視で確認する必要があるため、2024年までは視覚障害のある従業員が単独で担うのは難しかった。同社はその後、Gather AIと連携し、自律飛行ドローンを活用した在庫管理システムを導入した。

ドローンは倉庫内を巡回し、商品やパレットを撮影する。AIが画像からバーコードや数量などを読み取り、倉庫管理システム(WMS)の記録と照合する仕組みだ。確認結果はiPadの画面読み上げ機能を通じて音声で伝えられる。

業務効率も大きく改善した。Bosma Enterprisesで製造管理を担当するエリック・ナイト氏は、「以前は数日かかっていた在庫確認を、いまでは数分で実施できるようになった」と話す。Gather AIも、同社では在庫スキャン速度が従来手法の15倍に高まり、精度も向上したとしている。

糖尿病網膜症で視力を失ったナイト氏は、Metaのスマートグラスも日常業務に活用している。音声で周囲の物体を確認できるほか、バーコードや在庫管理番号の読み取り、文書の要約にも対応する。移動時には、フォークリフトやパレットなど周辺の状況把握にも役立つという。

Bosma Enterprisesが重視するのは、特定の職場向けに最適化した専用機器ではなく、他の職場でも利用できる汎用技術だ。ジェフ・ミットマンCEOは「視覚障害者の雇用における最大の障壁は、もはや技術ではなく、雇用主が『何ができるか』をどう認識するかにある」と指摘する。

この事例は、AIが単なる省人化や自動化の手段にとどまらず、これまで労働市場から排除されがちだった人材の就労機会を広げる技術になり得ることを示している。

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