USDC(写真:Shutterstock)

Circleが直近1週間で、米ドル連動型ステーブルコイン「USDC」を約50億ドル(約7500億円)発行した。市場では暗号資産市場の流動性需要拡大を示す動きとの見方が出ているが、発行分が直ちに市場に流入したことを意味するわけではない。実際の流通量や取引動向、規制対応の進展が今後の焦点となる。

Cryptopolitanによると、26日時点で市場では今回の大規模発行を、暗号資産市場における資金需要の強まりを示すシグナルと受け止める向きがある。USDCは取引、貸し付け、デリバティブの担保、送金など幅広い用途で使われており、発行増は市場の流動性需要の拡大につながる可能性があるためだ。

ただ、発行規模と同額の資金が即座に市場へ流れ込んだとは限らない。CircleはSolana上で、あらかじめ発行したUSDCを流通前のアドレスに保管できる。このため、総発行量の増加と実際の流通量の増加が一致しない場合がある。

時価総額ベースでみると、増加幅は発行規模ほど大きくない。DefiLlamaによれば、USDCの時価総額は約738億8000万ドル(約11兆8200億円)で、直近7日間では2.67%増加した。同期間のステーブルコイン市場全体の時価総額は約3037億2000万ドル(約45兆5580億円)となり、28億3000万ドル(約4245億円)増えた。

最大手のUSDTの時価総額は1831億7000万ドル(約27兆4755億円)で、市場全体の約60%を占める。USDCはこれに次ぐ規模となっている。

オンチェーン取引の動向にも変化がみられた。19日から25日までのUSDCの調整後オンチェーン取引額は2224億4000万ドル(約33兆3660億円)で、前週の2233億5000万ドル(約33兆5025億円)から0.4%減少した。一方で、取引件数は1427万件から1877万件へ31.5%増加した。取引総額はほぼ横ばいのまま、件数が増えたことで、取引の小口化が進んだ可能性もある。

ステーブルコイン需要は、グローバルな為替市場にも影響を及ぼし始めている。3月に公表された研究では、調査対象となった法定通貨とステーブルコインの取引のうち、70%超が米ドル以外の通貨で発生していた。研究チームはステーブルコインを「グローバル通貨市場の新たな部門」と位置付けた。

同研究を進めたイニャキ・アルダソロは、ステーブルコインへの純流入が1%増えると、ステーブルコインを通じたドル買いの価格と銀行間為替レートの差が約40ベーシスポイント(bp)拡大し得ると分析した。これは現地通貨安や、合成資金調達市場でのドルプレミアム拡大につながる可能性があるという。

こうした動きは、Circleの規制下での事業基盤拡大とも重なる。Circleは5日に公表した第2四半期決算で、四半期末時点のUSDC流通量が733億ドル(約10兆9950億円)となり、前年同期比で19%増えたと明らかにした。四半期のオンチェーン取引量は14兆8000億ドル(約2220兆円)で、前年同期比151%増。総売上高と準備金収益は7億100万ドル(約1052億円)だった。

規制面での基盤整備も進んでいる。Circleは米通貨監督庁(OCC)から「Circle National Trust」設立の承認を取得したほか、ニューヨーク州で限定目的信託会社の設立も進めている。自社ブロックチェーン「Arc」は9月16日に正式稼働する予定だ。

USDCの償還構造にも改めて注目が集まっている。CircleはUSDCを1枚当たり1ドルで償還できるよう運営しており、準備金は短期米国債や翌日物の国債レポなど、流動性の高い資産で裏付けている。準備金の状況や発行・バーンの内訳は週次で公表し、外部会計事務所による検証も毎月受けている。

今回の大規模発行の意味を見極めるうえでは、発行量そのものよりも、その後にどこまで実際の流通や取引拡大につながるかが重要になる。USDCの供給増が暗号資産市場の流動性拡大にとどまらず、グローバルな資金移動や制度対応が進む決済需要へ波及するかが注目される。

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