人工知能(AI)が検索や比較、選択の一部を担う「ゼロクリック(Zero Click)」の広がりを受け、企業には従来以上に情報管理と信頼構築が求められている。SK Telecom顧客信頼委員会のキム・ナンド委員は27日、SKTニュースルームのインタビューで、AI時代には個人情報の安全な管理と誠実な対応、さらに顧客接点での人の役割維持が重要になるとの見方を示した。
キム氏は、最大の変化として「消費者が自ら行ってきた選択や判断の一部をAIに委ね始めたこと」を挙げた。消費や意思決定の過程でAIが占める比重は今後さらに高まり、利用者が検索結果や商品を一つひとつ比較してクリックするのではなく、AIの推薦や判断を受け入れる場面が増えるとみている。
その上で、電話やスマートフォンが生活様式を大きく変えたように、AIも消費者行動の変化を一段と加速させると説明した。
こうした変化の中で、企業と顧客の関係では「信頼」の重みが増すという。AIが日常生活に深く浸透するほど、利用者はAIサービスそのものだけでなく、それを提供する企業や関連インフラにも身近さを感じるようになるためだ。
キム氏は「企業と顧客の距離が近づくほど、問われるのは企業の誠実さだ」と述べた。誠実さ自体は新しい価値ではないが、AI時代にはその重要性がむしろ一段と高まると指摘した。
パーソナライズサービスの拡大に伴い、個人情報管理の責任も重くなる。利便性の高いサービスの提供には、利用者が提供する個人情報の範囲が広がる可能性がある一方、その前提として企業が情報を安全に管理するという信頼が不可欠だとした。
AIサービスの拡大を進めるSKTにとっても、顧客情報の保護と信頼の確保は中核課題だ。パーソナライズの高度化が進むほど、顧客データを安全に扱う能力がサービスへの信頼に直結するためである。
キム氏は「顧客が特定の企業を信頼して情報を預ける以上、その情報が適切に管理されるという確信が必要だ」と述べた。パーソナライズの受容範囲が広がるほど、企業に求められるセキュリティ水準や情報管理体制も高まるとの認識を示した。
また、顧客接点ではAIと人が役割を分担すべきだと提言した。相談受付や情報案内の領域ではAI活用が広がる一方、顧客の不満への対応や問題解決の局面では、人が直接対応する必要があるとした。
キム氏は「問題が起きたとき、顧客は責任ある立場の人が直接対応することを期待する」と説明した。
顧客の声についても、単なる苦情処理にとどめるべきではないと指摘した。不満対応の過程で蓄積された事例や統計を商品・サービス部門に共有し、実際の改善につなげる必要があるという。
SKT顧客信頼委員会でも、顧客の不満や意見を実際のサービス改善に結び付ける方策を議論している。キム氏は、顧客接点でAI活用が広がっても、責任ある対応が求められる領域では人の役割を維持すべきだと改めて強調した。
さらに、SKTが長期顧客優遇プログラムなどを通じて既存顧客との関係強化に取り組んでいる点も評価した。通信は長期利用を前提とする産業であり、新規加入者の獲得だけでなく、既存顧客との信頼を積み重ねる戦略が重要だと述べた。
キム氏は、SKTについて「国民のAI活用を支えるインフラであり、ツールであり、さらに『全国民のAIエージェント』のような役割も検討する必要がある」と語った。
その上で「最も重要な価値は、結局は信頼だ」と強調した。顧客が自らの情報と選択を安心して託すことができ、問題が生じた際には責任ある対応を期待でき、長期にわたって関係を築ける企業であるべきだと述べた。