Salesforceのマーク・ベニオフCEOは26日、AIが既存のSaaS(Software as a Service)を侵食するとの見方を否定した。先端AIモデルはCRM基盤の上で価値を発揮するとの認識を示し、AI企業もSalesforceやSlackの利用を拡大していると強調した。
米CNBCによると、ベニオフ氏は直近の決算発表後、CNBCの番組「Mad Money」に出演し、「SaaSpocalypse(SaaS終末論)という筋書きはばかげている」と述べた。AIモデルはCRMに依存しており、既存のSaaSを置き換えるものではないという。
同氏は、企業向けソフト市場ではAIが単独で機能するのではなく、顧客データや業務フローが蓄積された既存プラットフォームと組み合わせることで価値を生むと説明した。
市場はひとまずこの説明を好感した。四半期業績が堅調だったうえ、会社予想も市場予想を上回ったことで、Salesforce株は12%超上昇した。
SalesforceはCRMソフトを主力事業とし、コラボレーションツールのSlack、データ分析基盤のTableauも展開している。
年初のウォール街では、高性能化したAIモデルが企業の従来型ソフトウェア需要を押し下げるとの懸念が強まっていた。企業が利用料を払って導入してきた各種ソフトウェアを、AIを使って内製できるのではないかとの見方も重なり、Salesforce株は26日の終値時点で年初来22%下落していた。
これに対し、ベニオフ氏は今回の決算がそうした懸念とは異なる流れを示したと強調した。これまで伝統的なSaaSの脅威とみなされてきたAI企業も、実際にはSalesforceとSlackを積極的に利用しているという。
同氏によると、AI企業上位10社のうち9社がSalesforceとSlackを採用しており、これら企業による同社プラットフォームへの支出は前年から435%増えた。
さらに、SalesforceとAnthropicの協業拡大もその一例として挙げた。両社は同日、「Cloudforce」を発表した。
この連携機能により、営業担当者はAnthropicのClaudeを使ってSalesforceに保存された顧客データを呼び出し、メール作成や記録更新などの業務を処理できるとしている。
ベニオフ氏は、AIモデルがSalesforceを代替するのではなく、Salesforceに蓄積された顧客データや業務上の文脈、ワークフローに依存するとみている。SalesforceはAIエージェントの基盤になり得るとしたうえで、「Salesforceは何よりもデータ企業だ」と述べた。
そのうえで、「こうしたAIモデルには、このレベルの知能、セキュリティ、統制が必要だ」と付け加えた。
今回の発言は、AIの普及が既存の企業向けソフトウェアの価格モデルや需要構造を揺るがしかねないとの市場の懸念に対する反論といえそうだ。Salesforceは、AIが単独でSaaSを置き換えるのではなく、検証済みの顧客データやセキュリティ統制、業務システムを備えた既存プラットフォームの重要性を高めていると訴えている。