JPMorganが、独自ステーブルコインの将来的な発行に含みを残した。現時点では計画はないとしながらも、顧客需要や規制環境の変化次第で検討する可能性があるという。米銀各社の間では、ステーブルコインを決済インフラとして取り込む動きが広がっている。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanやWall Street Journal(WSJ)などによると、同社は8月26日、現時点で独自ステーブルコイン発行の予定はないと説明した一方、需要や規制動向に応じて将来的な対応を判断する考えを示した。
JPMorganはすでに、機関投資家向けのデジタル預金トークン「JPM Coin」を運用している。ただ、預金トークンは既存の銀行預金に対するデジタル上の請求権を表すもので、独立したデジタル決済手段として流通するステーブルコインとは仕組みが異なる。預金トークンは、銀行システム内の預金をトークン化したものと位置付けられる。
米銀行業界では、自前のステーブルコイン発行を模索する動きが強まっている。これまで銀行は、ステーブルコインを既存の預金や決済事業を脅かしかねない存在とみてきたが、最近は自ら発行側に回って競争に加わる構想が浮上している。
JPMorganは過去のリサーチレポートで、ステーブルコインについて、資金移動の効率化に欠かせない要素だと位置付けていた。消費者や企業は、情報と同じように資金も素早く移動することを求めており、リアルタイム決済の急拡大によって即時決済は「選択肢」から「必須」へと変わりつつあるとしている。
こうした構想は、共同プロジェクトにも広がっている。6月には、米国の銀行と決済企業によるコンソーシアムが、グローバル決済向けステーブルコイン「OpenUSD」の立ち上げを目指し、オープンスタンダードに合流した。
この構想には、商業決済に使う主要7カ国通貨建てのステーブルコインを順次発行する案が含まれており、まずは米ドル建てから始める方針とされた。
このほか、Bank of America(BoA)やWells Fargo、Santanderを含む約12社の金融機関も、グローバル規模のステーブルコイン事業を推進していると伝えられている。従来は防御的にみられていたステーブルコインを、銀行業界が決済インフラに組み込もうとする流れが鮮明になってきた。
JPMorganは当面、独自発行に踏み切らない姿勢を保っているが、規制整備と顧客需要が整えば方針を転換する余地は残している。すでに機関投資家向けのデジタル預金トークンを運用しているだけに、今後は「預金トークン」と「ステーブルコイン」の二つの軸で、銀行のデジタルドル競争が進むかどうかが注目点となる。