韓国政府の科学技術・AI政策は「戦略策定」から「成果創出」へ移行している。写真=Shutterstock

韓国政府の科学技術・人工知能(AI)政策が、国家戦略の策定や基盤整備の段階から、実証と商用化を通じた成果創出へと軸足を移している。AI国家戦略やインフラ拡充で土台を整えたうえで、フィジカルAIやエージェンティックAIといった次世代技術を産業現場に実装し、具体的な成果につなげる考えだ。

科学技術情報通信部と関係省庁によると、昨年11月24日に初開催した科学技術関係閣僚会議は、今月24日までに計12回開かれた。同会議は、科学技術副首相を議長に関係省庁が参加し、科学技術政策とAI政策を総合調整する政府横断の枠組みとして運営されている。

◆初期段階は基盤整備を優先 AI・AX戦略からGPU確保まで

会議発足当初から、政策の中心にはAIが据えられていた。第1回会議では「AI民生10大プロジェクト」のほか、国防のAI転換(AX)、製造AX、科学技術×AI国家戦略を議論。AIを特定産業や個別省庁の政策課題ではなく、国家全体の成長戦略として位置付ける方向を明確にした。

1カ月後の第2回会議では、インフラと産業戦略の具体化に踏み込んだ。政府は先端GPUを約1万枚確保し、その配分方針を決定。あわせてAI半導体産業の飛躍戦略、AIバイオ国家戦略、AI時代のネットワーク戦略、労働市場向けAI人材育成策などを議題とした。

AI開発に欠かせない計算資源の確保に加え、半導体、ネットワーク、人材まで含めたエコシステム全体の基盤固めを進めた格好だ。その後も、国家AIプロジェクトへのGPU配分など、既存戦略を支えるインフラ支援を続けた。

今年に入ると、政府横断のAX推進体制や国家レベルの技術目標を具体化する作業が本格化した。1月の第4回会議では、「韓国版ジェネシス・ミッションK-ムーンショット推進戦略」、政府AX事業の全期間ワンストップ支援策、公的著作物のAI学習向け活用拡大策、情報保護総合対策などを扱った。

◆K-ムーンショットやデータ政策を経て、成果創出重視へ

3月以降は、国家的に必要な技術の選定と、公的部門を含むAI活用基盤の拡大が具体化した。

第5回会議では、「K-ムーンショット」プロジェクトの12大ミッションを確定した。国家的難題の解決に向けて挑戦的な技術目標を掲げ、省庁横断で能力を集中させる枠組みだ。同時に、国民全体のAI活用能力の底上げと日常利用の拡大策も議論し、技術開発と活用促進を並行して進める方針を示した。

4月に入ると、会議の重点は「戦略」から「成果」へと一段と移った。第7回会議では、政府R&D成果を市場につなぐ「R&D事業化システム高度化戦略」を提示し、研究成果に基づく起業や投資型R&Dの導入を進める方針を打ち出した。AIケアや公共AXなど、技術を実際の需要先に適用する課題も議論した。

第8回会議では、データと製造現場を前面に押し出した。AI大転換時代のデータ政策推進方針とともに、製造現場の熟練者が持つ経験や判断といった「暗黙知」をAIに組み込む製造AX支援策を議題とした。AI素材R&Dプラットフォームの構築や国家戦略技術の支援策についても協議した。

単に戦略を描くだけでなく、AIが実際に稼働するうえで必要なデータ、現場のノウハウ、研究成果を事業化する仕組みの整備段階に入ったことを示している。当時、ペ・ギョンフン副首相兼科学技術情報通信部長官は「政府のAI投資と支援を国民に成果として示すべき時点だ」と述べ、各省庁のAX推進状況と今後の計画を重点的に点検する考えを示した。

5月の第9回会議では、政府横断のAX推進状況を点検するとともに、フィジカルAIの中核競争力確保戦略と「製造AI 2030戦略」を議論した。製造、医療、農食品など10大分野におけるAXの進捗と、現場が抱える課題も確認した。

R&D政策も、成果の拡散を重視する方向へとかじを切った。第10回会議では、政府支援によって生まれた成果を再びR&Dへ循環投資できるよう、投資型R&Dの拡大案を検討。研究安全保障や、研究課題中心制度(PBS)廃止に伴う後続措置も扱った。

◆フィジカルAI、エージェンティックAI、自律走行AIの実証を加速

足元では、政策の実行段階がより具体的な産業・技術分野へと下りてきている。

先月の第11回会議では、フィジカルAI港湾戦略とエージェンティックAIイニシアチブが主要議題となった。港湾荷役設備の自律化を進め、チネ新港などにフィジカルAI技術を適用するほか、エージェンティックAIの産業実証と規制サンドボックスとの連携を進める方針だ。「みんなのAI」を含む主要AIプロジェクトへのGPU追加供給策も整えた。

今月24日の第12回会議では、国産自律走行AIの早期商用化に向けた「自律走行AI実証・商用化ロードマップ」を議題に載せた。技術開発にとどまらず、実道路で検証できる実証基盤を整備し、商用サービスへ接続することに重点を置いている。

ディープテック起業活性化戦略も議論した。研究室発の技術が起業、投資、市場参入へつながるよう支援体制を見直す内容だ。あわせて大韓民国AI倫理原則も策定し、AI普及に必要な信頼基盤の構築にも乗り出した。

業界では、これまで積み上げてきた科学技術・AI戦略を具体的な成果へ結び付ける局面に入ったとの見方が多い。戦略策定と基盤整備の段階を経て、政策が実証・事業化へ進んだ以上、今後の成否は現場でどこまで実装を進められるかにかかっているとの指摘も出ている。

ペ副首相は第12回会議で、「AI競争の真の成果は、優れた技術開発にとどまらず、産業現場と国民の日常で活用されるAIを実現することにある」と強調した。

キーワード

#人工知能 #AX #GPU #フィジカルAI #エージェンティックAI #自律走行AI #R&D #実証 #商用化 #科学技術情報通信部
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.