Appleは中国市場でAI機能の展開に乗り出した。中国本土では「Apple Intelligence」の一部機能の提供を開始した一方、競争力強化の柱と位置付ける次世代SiriのAI刷新はなお開発段階にあり、全面展開には時間を要する見通しだ。
7月31日付の香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、ティム・クックCEOは決算説明会のカンファレンスコールで、中国本土の利用者向けに「Apple Intelligence」の一部機能の提供を始めたと明らかにした。SiriのAI機能については、追加の開発が必要だと説明した。
中国の利用者に提供する機能には、写真内の不要な被写体を削除する「Clean Up」などが含まれる。クックCEOは、これらの機能の投入を進めているとした上で、SiriのAI機能については今後も開発を継続する考えを示した。
今回の提供開始は、「Apple Intelligence」が今月初めに中国の規制当局の承認を得たことを受けたもの。Appleは中国でAIサービスを展開するため、Alibaba Group HoldingやBaiduなど現地企業と連携している。他地域で先行提供してきたApple Intelligenceが、中国市場にも広がる格好となった。
中国市場は、AppleのAI戦略における重要地域の一つだ。世界最大のスマートフォン市場であるうえ、HuaweiやXiaomiなど現地メーカーとのAI競争も激しい。AppleもAI機能を競争力強化の中核に据えるが、直近四半期の中国事業は市場予想に届かなかった。
中国本土、香港、台湾、マカオを含む地域の売上高は、6月27日締めの四半期で前年同期比22%増の188億ドルだった。市場予想の196億ドルには届かなかった。一方、全社売上高は16%増の1094億ドル、iPhone売上高は22%増となった。
下期には、サプライチェーンへの負荷も強まる見通しだ。Appleは9月期に半導体の供給制約が強まるとみており、iPhone、Mac、iPadの生産に影響する可能性があるとした。これを踏まえ、次四半期の売上高成長率の見通しは9〜11%と示した。
クックCEOは、サプライチェーンの柔軟性が低下しており、供給制約の影響は段階的に大きくなるとの見方を示した。想定を上回るiPhoneとMacの需要が、半導体不足に拍車をかけたとも説明した。
メモリ価格の上昇も収益の圧迫要因として挙げた。クックCEOは、9月期にメモリコストがさらに上昇するとの見通しを示し、在庫の確保によって影響の抑制を図っていると述べた。足元の状況については「100年に一度の洪水」に例え、今四半期は実質的に供給対応に注力することになると語った。
実際、Appleは先月、Mac、iPad、Vision Pro、Home製品群のグローバル価格を引き上げた。一部モデルでは、メモリやストレージ関連コストの上昇を受け、価格が最大20%上がったという。市場では、iPhoneについても今後値上げの可能性が指摘されている。
業界では、メモリ価格の上昇がスマートフォン市場全体の収益性を圧迫するとの見方が出ている。Counterpoint Researchのリサーチディレクター、タルーン・パタク氏は、下期のスマートフォン市場は一段と厳しさを増すと予測する一方、Appleについては強固なインストールベースとAI機能への初期需要を背景に、主要ハードウェア事業で競合を上回る成果を上げる可能性があると分析した。
Appleは中国でAIサービス拡大の第一歩を踏み出したが、中核とみるSiriのAI刷新はなお道半ばだ。半導体の供給制約とメモリ高が続くなか、下期はAI機能の拡充とサプライチェーンの安定確保が当面の焦点となる。