Teslaが米カリフォルニア州のフリーモント工場で、電気自動車(EV)の累計生産1000万台を達成した。EV専業メーカーとしては初の大台となる。一方で、足元の事業環境は厳しさを増しており、納車台数の減少や需要鈍化が成長の重荷になっている。
Teslaは30日、X(旧Twitter)への投稿でこの節目を公表した。海外メディアも同日、この動きを一斉に報じた。投稿では「世界で1000万台を生産した」とし、全Teslaチームに謝意を示した。
Teslaは最初の100万台到達まで12年を要したが、2020年に100万台目を生産して以降は、1000万台まで約6年で積み上げた。EVの量産体制と収益性を両立してきたことを示す節目といえる。
比較対象として挙がるのが中国のBYDだ。BYDは2024年に新エネルギー車(NEV)の販売累計1000万台を達成したが、これにはバッテリーEVに加え、プラグインハイブリッド車(PHEV)も含まれる。これに対し、Teslaの今回の記録はEVのみを対象としている点が異なる。
今回の節目は、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の報酬体系とも無関係ではない。1000万台は、株主が昨年承認した約1兆ドル規模の報酬案に盛り込まれた運営目標2000万台の半分に当たる。マスク氏は2000万台超の達成で該当する報酬区分の条件を満たすとされており、今回の公表で残る距離が改めて可視化された格好だ。
ただ、生産の節目とは裏腹に、販売面では減速が鮮明になっている。Teslaは2023年に181万台を納車して過去最高を更新したが、その後は2年連続で減少した。2024年は約179万台と創業以来初の年間減少となり、2025年は前年比9%減の163万6129台にとどまった。市場では、主力車種の陳腐化、競争激化に加え、マスク氏の政治活動に伴う消費者の反発が成長鈍化の背景として指摘されている。
Teslaはこれまで投資家に対し、年平均約50%の成長を目標として示してきた。マスク氏も決算発表のたびにこの目標に言及してきたが、成長は2023年を境に止まった。Teslaは2024年1~3月期の株主向け書簡で「現在は2つの成長の波の間にある」と説明。第1の波をModel 3とModel Y、第2の波をより低価格の次世代車と位置付けたが、2年以上が過ぎた現在も第2の波は具体化していない。
生産能力と稼働実績の開きも目立ってきた。Teslaが開示する工場別の年間生産能力は、上海が95万台超、フリーモントが55万台超、ベルリンが37万5000台超。テキサスはModel Yが25万台、Cybertruckが12万5000台、Cybercabが12万5000台で、合計の年間生産能力は237万5000台を上回る。
これに対し、2026年4~6月期の実際の生産台数は45万1758台、納車台数は48万126台だった。この水準を年換算すると、2026年の生産は約180万台となり、自社の生産能力を50万台以上下回る計算になる。供給制約ではなく、需要不足に直面していることを示している。
商品構成も成長を十分に支えられていない。販売の中心であるModel 3とModel Yは、それぞれ2017年と2020年に発売したモデルだ。大きな販売を見込んでいたCybertruckも販売不振に直面しており、固定ファン層はいるものの、新たな成長ドライバーとしての寄与は限定的にとどまっている。
Cybercabとセミトラックはなお量産初期の段階にあり、Roadsterはここ数年にわたり設計・開発段階にとどまっている。
ロボタクシー事業の立ち上がりも鈍い。ベイエリア、テキサス、フロリダでは一部のModel Yベースのロボタクシーが走行しているが、多くの車両には人が監督者として同乗している。運行車両数はむしろ減少しており、ヒト型ロボット「Optimus」の開発も遅れが続いている。
もっとも、乗用車事業に一部持ち直しの兆しがないわけではない。Teslaは2026年4~6月期に前年同期比25%増と反発した。欧州でのガソリン価格上昇がEV需要を押し上げたことが背景とされる。
Teslaは今月、米国でロングホイールベース仕様の「Model Y L」を投入した。Bolt級の小型EVも準備中と伝えられているが、会社側が公式に確認した内容ではない。
累計1000万台の達成を真の節目と評価する声がある一方で、TeslaのEV事業の停滞を映す数字だとの見方もある。約10年にわたり株価を押し上げてきた成長ストーリーは2023年を境に転機を迎え、現在は単なる「成長の波の間の空白」ではなく、次世代EVへの投資を抑え、ロボットとロボタクシーに経営資源を振り向けた結果だとみる向きもある。
結局のところ、Teslaの自動車事業は、AIやロボティクス、自動運転への大規模投資を支える収益基盤としての意味合いが大きい。1000万台生産は明確な節目ではあるが、この投資構造を維持するには、なお一段の販売拡大が必要だとの見方が出ている。