韓国政府は、MVNOの料金競争力を高めるため、移動通信3社による卸提供プランの拡充と卸料金の引き下げに乗り出す。あわせて、自社通信設備を備えたMVNOの参入を後押しする制度整備や投資支援、利用者保護の強化も進める。
科学技術情報通信部は7月31日、経済関係閣僚会議と「生活物価特別管理」関係閣僚タスクフォースで、こうしたMVNO活性化策を発表した。
同部によると、韓国のMVNO市場には59社が参入し、加入者数は1000万人を超えた。一方で、移動通信事業者の料金プランを再販売する事業構造が中心となっており、値下げ以外で独自の料金プランやサービスを設計しにくいとの指摘が出ていた。コールセンター運営の不備や、ボイスフィッシングへの脆弱性といった利用者保護面の課題もあるという。
こうした状況を踏まえ、同部はこれまでの量的拡大を「MVNO 1.0」と位置付けたうえで、価格競争力、革新性・多様性、信頼性の3分野を強化する「MVNO 2.0」政策を打ち出した。
◆5Gの卸料金を最大3ポイント引き下げ 電波利用料減免は90%に
まず、移動通信3社が改編したデータ安心オプション付きの新料金プラン(QoS・400Kbps)について、8月から段階的にMVNO向けの卸提供を始める。方式は収益分配型(RS)で、MVNOが加入者から受け取る料金収入を移動通信事業者と一定比率で分け合う仕組みだ。
すでに卸提供している収益分配型の料金プラン約90種には、追加費用なしでデータ安心オプションを適用する。5G料金プラン約15種については、移動通信事業者の取り分に当たる卸料金を、事業者ごとに1~3ポイント引き下げる。
従量制料金プラン(RM)でもデータ安心オプションの卸提供を広げ、コスト低減を促す。中小MVNO向けの電波利用料減免率は、財政当局との協議を経て、従来の50%から90%へ引き上げる。法令順守や利用者保護の水準に応じて、減免率を区分適用できる根拠も整備する。これらの措置により、MVNO業界全体で年間約250億ウォンのコスト削減につながると見込んでいる。
MVNOと組み合わせやすい中価格帯端末の確保も支援する。中古スマートフォンの安心取引事業者認証制度は、昨年5月の導入から約1年で47事業者が参加し、認証中古端末の取引件数は約110万件に達した。同部は制度の活用を広げるとともに、中価格帯端末や自給端末の普及に向け、関係省庁、メーカー、流通事業者が参加する協議体を立ち上げる。
eSIMの即時開通を広げるため、相互接続告示の改正も進める。個人情報保護委員会と連携し、マイデータ基盤を活用した料金プラン比較・推薦サービスの対象を、主要MVNO事業者にも広げる方針だ。
また同部は、卸料金を自主交渉中心に切り替えた後の市場競争の状況を年内に総合評価し、今後の規制体系の見直しに生かすとしている。
◆自社設備型MVNOの成長を後押し 「投資のはしご」構築へ
政府は、自社設備を備えたMVNOの成長を支援する「投資のはしご」の構築も進める。単純な再販売にとどまらず、自社設備を基盤に多様な料金プランや提携サービスを提供するMVNOの育成が狙いだ。
具体的には、移動通信事業者のネットワークを借りながら、自社設備で料金プランや提携サービスを設計するサービス型MVNO(部分MVNO)と、これに加えてトラフィック管理設備まで備える独立型MVNO(フルMVNO)について、法的定義と設備要件を整備する。
ネットワーク連動の義務事業者は移動通信3社に拡大する。設備保有の水準に応じて、卸料金や設備利用料を異なる形で算定できるようにする。独立型MVNOの卸料金は自主交渉を原則とするが、事業者から異議申し立てがあった場合には、政府が対価算定の妥当性を事後的に検証する。
金融、流通、レジャーなど通信以外の企業によるMVNO市場への参入を促すため、MVNOインフラを他事業者に再提供する共用インフラ(MVNE)モデルも認める。設備投資負担を抑えるため、政策金融と連携した支援も進める。
同部は8月から、電気通信事業法施行令、卸提供告示、相互接続告示の改正作業に着手する計画だ。
◆コールセンター基準を厳格化 問題事業者の管理・退出も
利用者保護の基準も強化する。MVNOの登録・運営要件を見直し、顧客対応や利用者保護の体制が不十分な事業者や、経営基盤の弱い事業者に対する管理・退出基準を設ける。
コールセンターの接続遅延に対応するため、相談対応人員の基準を引き上げるほか、コールセンターの定期評価と市場全体の実態点検を実施する。中小事業者向けの利用者保護教育も拡充し、事業者の買収・合併の過程で利用者の不便を減らすための順守指針も整備する。
科学技術情報通信部は「今回の対策を通じて、MVNO加入者の継続的な拡大に加え、自社設備を保有するサービス型MVNOと独立型MVNOを3社以上増やすなど、持続可能なMVNOエコシステムの形成を期待している」と説明した。