米上院で審議が進む暗号資産市場構造法制「Clarity法案」を巡り、ドナルド・トランプ米大統領の利益相反問題が大きな争点となっている。民主党は法案支持の条件として、高位公職者がデジタル資産事業から利益を得ることを制限する倫理条項の強化を求めており、協議は難航している。
CryptoSlateが29日に報じたところによると、上院での協議では、民主党が大統領や副大統領を含む高位公職者に対する倫理規定の厳格化を重視している。焦点となっているのは、共和党が7月22日に公表した法案草案に倫理関連の規定を盛り込んだものの、民主党はなお不十分だとみている点だ。
民主党の交渉団は、倫理規定と利益相反防止条項をさらに強化する必要があると主張している。エリザベス・ウォーレン上院議員は、投資に関する例外規定や関連会社の構造、司法省による独占的な執行が抜け穴になり得ると指摘した。民主党は、現行の文言ではトランプ氏やその関連事業体が利益を得続ける余地を十分に塞げないとみている。
Clarity法案は、暗号資産業界が数年にわたって求めてきた市場構造の立法措置だ。下院は2025年7月ごろに同法案を294対134で可決し、上院銀行委員会も2026年5月に審議を前進させた。ただ、上院本会議での最終採決に必要な民主党票を確保するには、倫理条項を含む残る論点の詰めが欠かせない。
トランプ氏の親暗号資産姿勢は、就任後に政策へと反映された。トランプ氏は2024年の「Bitcoin 2024」イベントで、SECのゲイリー・ゲンスラー委員長の交代、暗号資産に前向きな規制当局者の起用、中央銀行デジタル通貨(CBDC)への反対、米国内でのビットコイン採掘支援、政府保有ビットコインの備蓄などを公約として掲げていた。
その後、2025年1月にはホワイトハウスが各機関に対し、暗号資産規制の見直しと銀行サービスへのアクセス確保を指示した。さらに2カ月後には、政府が既に押収していたビットコインを原資とする戦略的なビットコイン備蓄を創設した。
一方で、この時期にはトランプ家が支援したWorld Liberty Financial(WLFI)が大統領選前に立ち上がっていた。トランプ氏が暗号資産規制の変更を公約する一方で、同氏の名を掲げた事業が同業界に参入したことで、利益相反への懸念が強まった。Cardano創設者のチャールズ・ホスキンソン氏は、この分散型金融(DeFi)事業について「業界の重荷になり得る」との見方を示し、むしろトランプ氏による暗号資産立法の推進を難しくする可能性があると指摘した。
実際、上院協議では倫理条項に加え、ステーブルコインの報酬、州政府の執行権限、SECの資金調達に関する例外、マネーロンダリング防止(AML)規定、投資家保護などを巡って隔たりが残っている。民主党は、大統領や副大統領などの高位公職者によるデジタル資産の発行や支援を制限する規定を、法案支持に先立って明確にすべきだと主張している。
市場では、法案成立の見通しも後退している。Galaxyは2026年中の法案成立確率について、5月時点の75%から6月には60%へ引き下げた。上院の日程がさらに逼迫していることを踏まえ、足元では実質的に50%程度とみている。
欧州連合(EU)では既にMiCAが施行されており、暗号資産サービス提供者に対する移行期間も2026年7月1日に終了した。米国にとっては、行政府レベルの緩和措置にとどまらず、法律に基づく規制の確実性を打ち出せるかが、Clarity法案の行方を左右する。
上院協議の結果によって、今後の展開は大きく変わる。実効性のある倫理条項とステーブルコイン報酬を巡る折衷案がまとまれば、トランプ氏は迅速な行政府対応に加え、持続性のある立法成果も手にすることになる。
逆に、倫理条項やステーブルコインを巡る対立、さらに上院日程の制約で最終採決が遅れれば、業界が特定の政治家に過度に接近することで超党派の立法が難しくなるとの2024年時点の警告が、改めて現実味を帯びる可能性がある。