米民主党がバロン・トランプ氏とテイト兄弟の関係調査を求めたことで、暗号資産業界が期待する市場構造法案「クラリティ法案」の審議日程にも不透明感が広がっている。11月の中間選挙後に議会の勢力図が変われば、トランプ一族を巡る調査と暗号資産立法の双方に影響が及ぶ可能性がある。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanによると、ヤサミン・アンサリ氏(米アリゾナ州選出の民主党下院議員)は29日(現地時間)、下院監視・政府改革委員会に書簡を送り、アンドリュー・テイト氏とトリスタン・テイト氏、さらにトランプ一族との関係を調査するよう求めた。
アンサリ氏は、ドナルド・トランプ大統領の末子であるバロン・トランプ氏が、テイト兄弟を巡る性暴行や人身売買の疑惑に何らかの形で関与していないか確認する必要があると主張した。あわせて、トランプ一族がテイト兄弟の法的問題の解決に関与したかどうかも調べるべきだと訴えた。25日のポッドキャストでも同様の認識を示し、「バロン・トランプ氏は成人しており、ホワイトハウス周辺で大きな影響力を持つ人物だ」と述べた。
もっとも、現時点で実際に召喚調査へ進む可能性は高くない。下院では共和党が僅差で多数派を維持しており、監視・政府改革委員会が強制召喚に踏み切るには委員会での採決が必要なうえ、委員長も共和党所属だからだ。
ただ、11月の中間選挙で民主党が下院の多数派を奪還すれば、状況は変わる可能性がある。監視・政府改革委員会の調査権限が民主党側に移り、バロン・トランプ氏に対する証言要求などが現実味を帯びるとの見方が出ている。
バロン・トランプ氏は足元では、政界だけでなく暗号資産業界でも注目を集めている。トランプ一族の暗号資産事業であるWorld Liberty Financialの共同創業者として紹介され、保有するデジタル資産は約1億5000万ドル(約225億円)と推定されている。2024年の大統領選では、ドナルド・トランプ大統領が若年男性のオンラインコミュニティーとの接点を広げるうえで、一定の影響を与えた人物としても取り上げられた。
こうした政治要因は、暗号資産業界が推進するクラリティ法案の審議日程にも影を落としている。業界では、議会が8月の休会に入る前の法案通過を事実上の期限とみてきたが、先行きは一段と読みにくくなっている。ジョン・チューン上院共和党院内総務も最近、クラリティ法案を夏季休会前に処理できない可能性が高いと認めたうえで、「少なくとも議論は始めたい」と述べ、9月以降の再推進に含みを持たせた。
クラリティ法案は、多くの暗号資産を証券ではなくデジタル資産として位置付け、米証券取引委員会(SEC)の規制範囲を明確化する内容を柱とする。ステーブルコインに利払いを認めるかどうかも主要な論点の一つだ。
市場でも、法案成立への期待は後退している。暗号資産の予測市場Polymarketでは、クラリティ法案が年内に成立する確率は約38%まで低下した。今春には80%を超えていた水準から大きく後退した格好だ。業界では、上院が8月7日までに法案を処理できれば年内立法は可能とみる一方、政界対立の深まりを受け、実際の成立確率は低下しつつあるとの見方が広がっている。
一方、暗号資産業界と人工知能(AI)、ビッグテック各社は今回の選挙サイクルで、計2億9400万ドル(約441億円)を政界に投じたと集計された。ただ、暗号資産業界の支援を受けた一部の民主党候補は期待を下回る結果にとどまり、超党派の支持確保を狙った戦略の効果を疑問視する声も出ている。
クラリティ法案を巡っては、規制の枠組みを定める議論にとどまらず、中間選挙による議会勢力の再編や、トランプ一族を巡る政治問題も絡み、情勢は一段と複雑さを増している。