TwentyOne Capitalが、株価プレミアムを前提にビットコインを買い増す従来型の財務戦略から、保有BTCを活用してキャッシュを生む事業モデルへの転換を打ち出した。新たにCEOに就いたラファエル・ザグリ氏は、純資産価値を上回る株価を利用した資金調達とBTC買い増しは長続きしないとの認識を示している。
ブロックチェーンメディアのCryptoSlateが29日付で報じた。ザグリ氏は、22日に米証券取引委員会(SEC)へ提出された対談資料の中で、保有ビットコインの価値を上回る価格で株式を発行し、その調達資金で追加のビットコインを購入する手法について、一時的な市場のひずみに依存したモデルだと説明した。
同氏は、同様の戦略を採る企業が増えれば増えるほど、市場が与えるプレミアムは純資産価値(NAV)に近づき、最終的には1倍水準へ収れんするとの見方を示した。
その上で、プレミアムが再び拡大する局面はあり得るとしながらも、それを株主リターンの唯一の源泉にすべきではないと強調した。
こうした認識を踏まえ、同社は単純なビットコイン買い増しよりも、ビットコインを保有するバランスシートを活用して収益を生む事業の拡大に軸足を移す。優先分野として、事業の買収または自前構築、資本市場機能の拡充、ビットコイン担保型の金融商品の開発、ビットコイン特化の融資プラットフォーム構築を挙げた。
買収対象については、ビットコイン建てで株主価値の向上につながることを条件にするとしている。
今回の戦略転換は、経営トップの交代とも重なる。ザグリ氏は20日付でCEOに就任し、前CEOのジャック・マラーズ氏はCEO職と取締役を退任した。
同社は、マラーズ氏の退任について社内対立によるものではないと説明している。今後マラーズ氏はビットコイン決済企業Strikeに専念し、Strikeとの統合計画もこれ以上進めない方針だという。
ザグリ氏は、新たな収益エンジンの候補としてマイニング事業を例示した。マイニングでキャッシュを生み、その資金をポートフォリオ全体に再配分できる可能性があるとみている。
一方で、同社はこうしたモデルをまだ実際には構築しておらず、実行は容易ではないことも認めた。
ビットコインそのものを上回る収益を目指すのかとの問いに対し、同氏は、同等の価値をより低いボラティリティで実現できるだけでも十分に意味があると回答。長期的にビットコインを上回るパフォーマンスを安定的に生み出すには、例外的な機会、あるいは無責任なレバレッジが必要になりかねないとも述べた。
マイニングなどの事業運営は、こうした観点から、より良好なリスク調整後リターンを実現する手段として位置付けられている。
もっとも、足元の実績はこの戦略転換の成果をまだ示していない。TwentyOne Capitalの1〜3月期報告書によると、3月31日時点のビットコイン保有量は4万3514BTCだった。
同報告書には事業売上の計上はなく、営業損失は1057万ドル(約16億円)だった。会社が掲げるキャッシュ創出エンジンは、現時点では業績に反映されていない。
なお、同社の説明は、直ちにビットコイン売却へ動く意向を示すものではない。ザグリ氏が示した「100BTCの財務資産のうち50BTCをキャッシュ創出企業と交換する」というケースは、あくまで仮定の例として紹介されたものだ。
また、ザグリ氏が率いるマイニング事業Electron Energyとの統合可能性についても、現時点では予備的な検討段階にとどまっており、確定契約や承認が保証されているわけではないという。
TwentyOne Capitalは、株式発行でビットコインを積み上げ続ける単純な戦略から一歩踏み込み、ビットコイン建ての収益改善とリスク調整後リターンの向上を実事業で実現できるかが問われる局面に入った。現段階では、この転換は実績に裏打ちされた成果というより、株価プレミアム縮小を見据えた新たな試みといえそうだ。