Teslaのイーロン・マスクCEOが、Model SとModel Xをオープンソースとして公開する方針に言及した。もっとも、2023年に公開した初代Roadsterでは、実際の開示範囲が限定的だった経緯がある。業界では今回も主要な設計資料やソースコードが含まれなければ、オープンソースと呼ぶには不十分だとの見方が出ている。
米EVメディアElectrekが24日(現地時間)に報じたところによると、マスク氏は最近、Model SとModel Xのオープンソース公開計画に触れ、先例として2023年の初代Roadster公開を挙げた。
ただ、Roadsterの公開内容は一般的なオープンソースの定義とは隔たりがあった。マスク氏は2023年11月、初代Roadsterの設計・エンジニアリング資料をすべて公開したとして、「われわれが持つものは、あなたも持つことになる」と説明していた。
実際に公開されたのは、GitHubリポジトリ上の8ファイルと、ログイン後に閲覧できる5種類の文書に限られた。
GitHubには、Roadster 1.5と2.0向けのCANデータベースファイル5件、診断ソフトウェアのISOファイル1件、PDFガイド2件が掲載された。CANデータベースファイルは2022年12月に登録され、ISOファイルとPDF文書は2023年11月に追加された。その後、およそ2年半にわたり新たな更新は確認されていない。
より大きな問題は、中核となる技術資料が公開対象に含まれていなかった点だ。公開資料には、CADデータ、機械図面、部品表(BOM)、モーター設計、バッテリーパック設計、パワーエレクトロニクスの回路図、ファームウェアのソースコードなどが含まれていなかった。診断ソフトウェアも実行ファイルのみで、ソースコードは公開されなかった。
実際の再現作業でも限界が露呈した。オープンソースハードウェア企業のAntmicroは、Roadsterの電子装置シミュレーションプロジェクトを進める過程で、製造用のGerberファイルと部品配置データは確保できたものの、PCBの元設計ファイルがなく、回路基板設計のかなりの部分を作り直す必要があったと説明した。
ライセンス面も論点となった。TeslaはGitHubリポジトリで、資料が「Roadster公開研究開発文書条件」に基づいて配布されると明記したが、内容は実質的に免責事項に近かった。Teslaは、当該資料が公式の整備・保守文書ではなく、正確性や完全性を保証しないとしていた。
さらに、これらの資料を基に製作した部品について、Tesla純正として認めないことも明記した。
一方、一般的なオープンソースライセンスにみられる複製、改変、再配布の許諾や、特許使用権の付与に関する条項は盛り込まれていなかった。Electrekは、現状は文書公開に近く、一般に通用するオープンソースの定義とは隔たりがあると指摘している。
業界の関心は、Model SとModel Xでも同様の方式が繰り返されるかどうかに集まっている。Teslaは今年1月、両車種の生産終了を決め、4月に生産を終えた。Roadsterも生産終了から一定期間を経て、限定的な資料のみが公開された経緯がある。
同じ前例が当てはまる場合、Model SとModel Xでも公開は診断ソフトウェアや一部のCANデータベース、製造用出力ファイルなどにとどまり、自動運転システムや駆動ユニット、バッテリーパック設計といった中核技術資料は除外される可能性があるとの見方が出ている。
ソフトウェア公開は別の論点だ。Model SとModel XはLinuxベースで動作しており、Teslaは2018年からLinuxカーネルとBuildrootのソースコードの一部を公開してきた。
ただし、Software Freedom Conservancy(SFC)は当時、公開範囲がオープンソースライセンス上の義務を十分に満たしていないと指摘していた。今回のModel S/X公開が、こうした論争の解消につながるかどうかにも注目が集まっている。
専門家の間では、今回の発表が産業的な意味を持つには、従来より大幅に広い公開範囲が必要だとの見方が強い。CADデータやファームウェアのソースコードに加え、正式なオープンソースライセンスまで提供されれば、量産車プラットフォームの技術公開として評価され得る。一方、Roadsterと同程度の開示にとどまるなら、象徴的な公開以上の意味を持ちにくいとの分析だ。