NVIDIAはSIGGRAPH 2026で、DLSS 5の実装方法と開発者向け制御機能を改めて説明した。初公開時に出た「人物の顔が不自然になる」といった批判を受け、開発者が適用範囲や効果の強さを調整できる設計を前面に打ち出した格好だ。
米ITメディアTechRadarは22日(現地時間)、Tom's Hardwareの報道を引用し、NVIDIAが米ロサンゼルスで開催されたSIGGRAPH 2026でDLSS 5の仕様を説明したと報じた。
DLSS 5は、従来のDLSSアップスケーリングやフレーム生成に加わるニューラルレンダリング技術だ。ゲーム画面全体により写実的な表現を加える手法として紹介されたが、GTC 2026での初公開時には、作品本来の質感やアートディレクションを損なうとの批判が相次いだ。とりわけ、人物の顔つきが不自然に変化し、不気味の谷を想起させるとの指摘が目立った。
今回の説明では、そうした反応を踏まえ、開発者側の裁量を広げる点が強調された。NVIDIAは、画質と性能負荷のバランスが異なる3種類のAIモデルを用意し、シーンごとに使い分けられるとした。ゲーム全体へ一律に適用するのではなく、場面に応じて異なる設定を組み合わせる想定だ。
加えて、「構造」と「トーン」を調整する2つのスライダーも用意した。効果の出方を開発者が細かく制御できるようにする狙いがある。
適用除外の機能も加えた。開発者はDLSS 5を適用しないゲームアセットを個別に指定でき、キャラクターの髪や顔を対象外にしつつ、背景オブジェクトや環境表現だけを補正するといった運用が可能になる。DLSS 5を画面全体に一律適用するのではなく、一部領域に限定して使えるように方針を見直した形だ。
もっとも、市場の反応が全面的に改善したわけではない。Redditなどのオンラインコミュニティでは、初公開時より改善したと評価する声がある一方、依然として制御の自由度が十分ではないとの指摘も続いている。あるRedditユーザーは、DLSS初期には大きな期待を寄せていたものの、現在は方向性が崩れてしまったと投稿した。別のユーザーは、見た目を取り繕ったInstagramフィルターのようだと批判している。
論点は主に2つある。1つは、開発者に与えられた調整権限が十分かどうかだ。3種類のAIモデルと2つの強度調整だけでは、ゲームの見た目を精密に制御するには不十分だとの見方が出ている。NVIDIAはDLSS 5を今年秋に投入する予定で、正式リリースまでに制御機能がさらに拡充される余地はある。
もう1つは性能面の負担だ。NVIDIAがDLSS 5を初めてデモした際には、RTX 5090を2枚使用していた。今回の説明では、どのハードウェア環境で動作させたのかは明らかにしていない。このため、依然として高いGPU要件が必要なのではないかとの懸念が残る。
NVIDIAはSIGGRAPH会場で、DLSS 5は「VRAM効率が高い」と説明したものの、具体的な数値は示さなかった。単一GPUで動作することは確認されたが、実際にどのクラスのGPUまで対応するのか、どの程度の性能低下が生じるのかはなお不透明だ。業界では、初期段階ではRTX 5080以上、実質的にはRTX 5090級のGPUが必要になるとの見方も出ている。
このほか、初期バージョン特有の画質異常を懸念する声もある。従来のDLSS 1も、リリース当初はぼやけや各種不具合を指摘されたが、その後の改善で安定性を高めた。DLSS 5にも同様の成熟プロセスを期待する向きはあるが、初版の時点で一定の完成度を示せるかが問われる。
今後の焦点は、開発者向け制御機能がどこまで拡充されるか、そして実際のゲーム環境で画質と性能負荷のバランスをどこまで両立できるかにある。NVIDIAは反発を和らげるための修正案を示したものの、ゲーマー側の懸念を解消したとみるのは時期尚早だ。