AI開発支援ツールの普及を背景に、モバイルゲームやアプリの公開本数が急増している。開発のハードルが下がり、個人や小規模スタジオでも参入しやすくなった一方、ダウンロードや売上は依然として大手企業に集中している。
オンラインメディア「GIGAZINE」が1日(現地時間)に伝えたところによると、調査会社ATTN Economyは、2026年5月までの直近6カ月に公開されたスマートフォンゲームが18万1000本に達したと集計した。OS別では、iOSが前年同期比118%増、Androidが73%増だった。
同様の傾向はアプリ市場全体でもみられる。アプリ分析会社Appfiguresは、2026年1〜3月期の世界のiOS/Android向けアプリ公開本数が前年同期比で約60%増えたと発表した。中でもiOSは80%増と伸びが大きかった。ゲーム市場分析会社Naavikも、2025年3月から2026年2月にかけて、新規パブリッシャー数がiOSで21%増、Androidで82%増になったと分析している。
業界では、この背景としてAIベースの「Vibe Coding」の広がりを挙げる。コード生成やデバッグをAIが支援することで開発期間が大幅に短縮され、専門の開発者でなくてもアプリやゲームを作りやすい環境が整ってきたという。
ただ、公開本数の増加がそのまま成功に結び付いているわけではない。Naavikによると、2025年12月から2026年2月にかけて売上高が2万ドル(約300万円)を超えたゲームは14%増にとどまった。供給の増加に比べ、ヒット作の伸びは限定的だった。
ATTN Economyは、世界のアプリダウンロードの約80%が上位1%の企業に集中し、売上の大半もこれらの企業が占めていると分析した。AIによって参入障壁は下がったものの、市場構造そのものは大きく変わっていない。
大手ゲーム会社の優位性は依然として強い。ATTN Economyは、大手各社が潤沢な開発資金や経験豊富な人材に加え、長年蓄積してきたユーザーデータを持っており、AIの活用だけでその差を埋めるのは容易ではないと指摘した。
AI導入を巡る懸念も強まっている。ゲーム開発者会議(GDC)の「Festival of Gaming」報告書によると、ゲーム業界従事者の4人に1人が直近2年間でレイオフを経験した。生成AIがゲーム産業に悪影響を及ぼすと答えた割合は52%に達し、2024年の18%、2025年の30%から大きく上昇した。
分野別では、ビジュアルアートおよびテクニカルアートで64%、ゲームデザインとナラティブで63%がAIを否定的に評価した。これに対し、好影響を見込む回答は7%にとどまった。
消費者の信頼も新たな課題として浮上している。ATTN Economyは、AIで制作されたコンテンツに接したユーザーは、そのブランドへの信頼を下げる可能性があると分析した。とりわけゲームは、ストーリーやアートの完成度が満足度を左右するため、AI活用がかえってブランド価値を損なうおそれがあるとしている。
一方、AIを前向きに捉える見方もある。チェコのゲームスタートアップVaka AIの共同創業者兼CEO、ブラスティミル・ベンツリク氏は、AIの性能はこの2年で大きく向上したとし、今後はストーリーテリングや対話の品質も継続的に改善するとの見通しを示した。同氏は「すでにほとんどのゲームスタジオがAIを活用している」と述べ、一部ゲーマーの拒否感も時間の経過とともに薄れる可能性があるとの見方を示した。
AIはモバイルゲーム市場の供給拡大を後押ししているが、最終的な競争力を左右するのはコンテンツの品質やユーザーからの信頼、企画の差別化だ。AIが開発体制や雇用構造をどう変えるかも、今後の焦点となりそうだ。