貯蓄銀行で、役員ごとの責任と管理義務を明確にする「職務責任マップ」の導入が本格化する。総資産7000億ウォン以上の貯蓄銀行は2日までに同マップの導入・提出が必要となる。内部統制を形式面にとどめず、責任経営として機能させられるかが焦点となる。
金融業界によると、職務責任マップは、金融会社の役員別に担当業務と内部統制上の責任範囲をあらかじめ整理する制度だ。金融事故発生後に責任を問うだけでなく、事前に役員ごとの職務と管理義務を明確にし、内部統制の実効性を高める狙いがある。
貯蓄銀行業界ではこれまで、健全性管理や内部統制の不備がたびたび問題視されてきた。不動産プロジェクトファイナンス(PF)の不良化に加え、融資審査や事後管理、ガバナンス面の課題も重なり、健全性と信頼性の両面で継続的な点検対象となっていた。今回の導入により、責任範囲を具体化し、形式的な内部統制から実効性のある管理体制へ移行できるかが問われる。
金融監督院は先に、大手の与信専門金融会社と貯蓄銀行を対象に、職務責任マップに関する事前コンサルティングを実施した。対象は、直近事業年度末時点で総資産5兆ウォン以上の与信専門金融会社24社と、総資産7000億ウォン以上の貯蓄銀行33社。このうち、与信専門金融会社22社、貯蓄銀行30社の計52社が参加し、対象先の約91%を占めた。
金融監督院によると、この参加率は、銀行・金融持株会社向け試行時の29%、大手金融投資会社・保険会社向け試行時の79%を上回った。業界でも制度の趣旨にはおおむね共感が広がっており、各社の実務に照らして制度の運用可能性を点検できた点を前向きに評価する声が出ている。
一方、コンサルティングの過程では、職務の配分や記載方法などで改善が必要な事例も確認された。金融監督院は、特定の役員に職務が過度に集中すると、利益相反や専門性不足によって内部統制が形骸化する恐れがあるとみている。このため、役員の専門性と担当業務の関連性、利益相反の可能性などを踏まえた責任配分が必要だと勧告した。
事前コンサル後に補完、期限内提出に大きな支障なし
貯蓄銀行業界では、金融監督院の事前コンサルティングを受け、職務責任マップの一部を修正・補完したもようだ。一部企業では、代表取締役の職務を統合して共通業務を整理したほか、革新金融業務に関連する職務を追加した。業務再委託と情報処理業務の再委託を区分して職務を付与する方式でも補完を進めたという。
多くの貯蓄銀行は、職務責任マップの作成に向けて外部コンサルティングも活用した。会計法人や法律事務所を通じ、職務配分や管理義務の記載方法、内部規定との整合性などを点検した。業界としては、共通の標準案をベースにしつつ、各社が自社の組織構造に合った責任経営モデルの構築を進めたとしている。
業界内では、期限内の提出自体に大きな支障はないとの見方が強い。多くの対象先が期限までに提出を終える見通しで、一部では直前まで文言や職務配分の方式を追加で見直す可能性がある。
指摘事項のうち、役員別職務の集中については、大型の貯蓄銀行では大きな問題ではないとの声がある。一定規模以上の企業では役員間の職務分掌が比較的細かく、特定役員に業務が過度に偏る構造ではないという。職務責任マップ導入を理由とした組織改編や役員人事も、現時点では検討していないとされる。
文書化より運用定着が焦点
制度の実効性を巡っては、期待と実務負担の両面が指摘されている。責任の所在を事前に明確化することで、内部統制水準の向上や金融事故の予防が期待される一方、現場では定期的な履行点検や文書・証憑管理の負担が増すとの見方もある。
現場職員も、職務責任マップに基づく履行事項を定期的に記録し、システム上に証跡を残す必要がある。このため、経営陣や役員には責任範囲拡大の負担が、現場には点検と証憑管理の負担がそれぞれ生じる可能性がある。
焦点は、職務責任マップを単なる提出書類で終わらせないことにある。役員別の職務を形式的に列挙するだけでは制度導入の効果は限られる。各役員が担当領域のリスク要因を実際に点検・管理する体制が定着すれば、貯蓄銀行業界の内部統制に対する信頼向上につながる可能性がある。
今後は、総資産7000億ウォン未満の中小型貯蓄銀行にも制度が拡大する見通しだ。中小型の与信専門金融会社と貯蓄銀行は、2027年7月2日までに職務責任マップを導入しなければならない。大手に比べて役員数や専任人員が不足し、準備負担が重くなる可能性はあるものの、内部統制の死角を減らし、責任の所在を明確にするという制度趣旨は同様に適用される。
特に中小型の貯蓄銀行では、役員が複数の役割を兼務したり、内部統制の専担人員を独立して配置しにくかったりするケースが少なくない。非上場のオーナー経営が相当数を占めるうえ、取締役会運営の効率性を理由に、代表取締役と取締役会議長の兼務構造が維持されてきた側面もある。制度拡大に伴い、規制ガイドラインの範囲内で、兼務構造と職務配分原則をどう両立させるかが主要課題となりそうだ。
内部統制強化と金融事故予防に期待
業界では、標準案の整備や教育、コンサルティング支援の必要性も指摘されている。新制度を現場の混乱なく定着させるには、各社の自助努力に加え、金融当局や中央会による継続的な支援とコミュニケーションが欠かせないという。ただ、制度定着の成否は、各社が職務責任マップを実際の内部統制運用と結び付け、責任経営をどこまで実装できるかにかかっているとの見方が大勢だ。
業界関係者は「職務責任マップの導入は、責任の所在を事前に明確化して可視化するという点で、全社的な内部統制水準の向上と金融事故予防に確かなプラス効果があると期待している」としたうえで、「急激な転換点というより、リスク管理の体質を段階的に変えていくプロセスと受け止めている」と述べた。
別の関係者は「内部統制が不十分な場合に役員へ直接責任を問いうる制度である以上、新規事業の推進や中・低信用者向け金融供給の過程でも、リスク検討は一段と強まる可能性がある」と指摘。「意思決定がやや保守化する可能性はあるが、内部統制強化という制度趣旨に共感している以上、金融供給機能とのバランスを取ることが重要だ」と語った。
金融監督院は今後、職務責任マップ導入企業の意見を聴取し、運用状況を点検したうえで、課題や不十分な点を金融会社に案内する方針だ。制度の実効性を損なわない範囲で金融会社の負担を軽減しつつ、経営上層部の責任を強化する方策も模索する。