中国のAI企業DeepSeekが、V4 APIのピーク時料金を2倍に引き上げる。対象は北京時間の午前9時〜正午、午後2時〜6時で、7月中旬のV4正式版公開に合わせて適用を始める。大幅値下げで中国のAI価格競争に火を付けた同社が、時間帯別の料金設定へとかじを切る形だ。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が6月30日、報じた。DeepSeekは利用者向けメールで、混雑時間帯にV4 APIの料金を引き上げると案内した。
新料金はV4シリーズ全体が対象となる。DeepSeekは別の告知で、すべてのV4モデルに適用すると明らかにした。V4 Proのピーク時料金は、出力100万トークン当たり12元。通常時間帯の6元から2倍となる。AI企業は一般に、API経由でモデル利用を提供し、トークン使用量に応じて課金している。
今回の価格改定は、7月中旬のV4正式版公開に合わせて実施する。V4は4月末にプレビュー版として先行公開されており、正式版への移行と同時に料金体系も見直す。
値上げの理由についてDeepSeekは、サービス運用上の課題を挙げた。利用者向けメールでは、「より良いリソース配分」と「サービス安定性の強化」が必要だと説明している。単純な値上げではなく、需要が集中する時間帯の利用を平準化する狙いがあるとみられる。
市場では今回の決定について、ここ数カ月続いてきた中国AI業界の低価格競争とは異なる動きと受け止める見方もある。DeepSeekは5月、V4 APIの利用料金を恒久的に75%引き下げると発表し、価格競争を主導してきた。その後、ByteDanceやTencentも同様の値下げに踏み切り、シェア獲得競争が本格化した。
中国AI各社の値下げ競争は、6月に入ってさらに激しさを増した。ByteDanceは6月中旬、動画生成モデル「シーダンス2.0ミニ」を100万トークン当たり23元で投入した。従来の標準版コストの半分の水準という。これに先立ち、XiaomiとTencentも一部AIモデルの価格をそれぞれ最大99%、70%引き下げている。
そうした中での割増料金導入は、開発者や企業顧客の獲得に向け、一律の値下げに依存してきた手法からの転換といえる。ピーク時と通常時間帯の価格差を明確にすることで、需要分散とインフラ運用の安定化を同時に狙う構図だ。
今後の焦点は、ほかの中国AI企業が時間帯別課金を追随するかどうかにある。これまでは市場シェア確保に向けた値下げ競争が中心だったが、今後はサービス安定性やリソース配分を織り込んだ、より細かな料金戦略が広がる可能性もある。