EUの暗号資産規制強化を受け、事業者の拠点戦略にも見直しの動きが出ている。写真=Shutterstock

欧州連合(EU)の暗号資産規制「MiCA」が7月1日に本格適用される。認可を取得していない暗号資産企業や取引所は、EU向けサービスの継続が難しくなる見通しで、欧州の事業者の間ではアラブ首長国連邦(UAE)、とりわけドバイを新たな拠点候補として検討する動きが広がっている。

6月30日付のブロックチェーンメディア「Cryptopolitan」によると、MiCA対応を迫られた事業者の間で、UAEでの法人設立や認可取得を模索する動きが急速に増えているという。

MiCAは、欧州経済領域(EEA)全体で共通の認可制度を導入する枠組みだ。対象市場はEUに加え、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーを含む約5億人規模に及ぶ。既存事業者は移行期間中に認可取得の準備を進めてきたが、7月1日以降は無認可のままEU顧客を相手に事業を続けることが難しくなる。市場では、同日を事業継続の可否を左右する事実上の節目とみる向きが強い。

こうした動きを受け、法務や設立支援に関する相談も増えている。UAEでの法人設立や認可手続きに関する問い合わせは、企業や起業家から毎週複数件寄せられており、このうち半数超を欧州発が占めるという。主な発信地としてはスペイン、イタリア、ドイツが挙げられ、MiCA適用圏外のスイスや英国の起業家からの接触もあるとしている。

大手取引所にも影響は及んでいる。Binanceは先週、ギリシャで進めていたMiCA申請を取り下げ、別ルートで認可取得を進める間、EUユーザー向けの一部サービスを停止すると明らかにした。一方で同社は、欧州事業の計画自体に変更はないとし、「今後数カ月以内にMiCAライセンスを確保できると確信している」と説明している。

規制強化は顧客獲得競争にも波及している。すでにMiCA認可を取得したOKXとCoinbaseは、Binanceの申請取り下げの翌日、新規ユーザーに最大8%の入金ボーナスを提供すると発表した。欧州での事業継続可否が分かれる中、先行して認可を確保した取引所が乗り換え需要の取り込みを狙った動きとみられる。

業界内では、MiCAが中小事業者により重い負担をもたらすとの懸念も出ている。OKXの欧州最高経営責任者(CEO)、エラルド・グス氏は以前、「暗号資産企業の80%はMiCAに対応できず、欧州市場から押し出される」との見方を示していた。統一基準の導入が市場整備につながる可能性がある一方、認可コストや手続き負担の増加が業界再編を促す構図も鮮明になっている。

その中で、ドバイは相対的に認可取得が速い点を強みに打ち出す。現地の仮想資産規制庁は、仮想資産の監督に特化して設立された機関だ。これに対し、欧州の多くの規制当局は銀行など伝統的な金融機関も併せて監督しており、新規事業者や新規プロジェクトの審査スピードに差が出るとの見方がある。

UAEの認可が、欧州以外の市場展開にもつながる点も企業にとっては魅力だ。UAEで認可を取得すれば、アジアや北アフリカ市場へのアクセスが可能となり、潜在顧客基盤の拡大も見込める。欧州で規制対応のハードルが高まる中、一部の暗号資産企業が単なる代替拠点の確保にとどまらず、事業拠点そのものの見直しに動く可能性も注目されている。

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