Fundstratのチーフストラテジスト、トム・リー氏は、暗号資産市場を巡る悲観論が強まるなかでも、恐怖に駆られた売りは避けるべきだとの考えを示した。足元の調整局面については、AIブームに伴う資金シフトが影響していると分析し、短期の値動きではなく長期のファンダメンタルズと技術進展に目を向けるよう訴えた。
ブロックチェーン関連メディアのU.Todayによると、リー氏は6月29日(現地時間)、アンソニー・スカラムーチ氏が司会を務める「All Things Markets」のインタビューで、現在の市場心理を「暗黒期」と表現した。ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)への関心は大きく低下し、Google検索のボリュームも減少。恐怖・強欲指数は、FTX崩壊直後を下回る水準まで悪化したと説明した。
リー氏は、この1週間の相場は極めて厳しく、投資心理はこれ以上ないほど冷え込んでいると指摘した。一方で、こうした極端な悲観は相場反転の兆候になり得るともみている。
ウォール街で35年以上にわたり市場を見てきた経験を踏まえ、リー氏は大幅な調整局面では価格の弱さそのものより投資機会に目を向けるべきだと強調した。「どの弱気相場でも、注目すべきは機会だ。ファンダメンタルズが改善しているにもかかわらず、価格に反映されない局面はこれまで何度もあった」と語った。
今回の調整の主因として挙げたのが、人工知能(AI)分野への投資熱だ。AI産業の急成長に伴い、計算資源や電力、投資資金がAI分野に大きくシフトし、その結果として暗号資産市場では一時的に資金が細ったと分析した。リー氏は「いまは大規模な技術革新が進む局面で、AIは指数関数的に発展している。それだけ膨大な計算能力とエネルギー、投資資金を必要とする」と述べた。
ただ、こうした資金シフトがブロックチェーンの成長ストーリーを損なうわけではないとも指摘した。むしろAIの普及が進むほど、ブロックチェーンの役割は一段と重要になる可能性があるとし、AIと伝統金融、ブロックチェーン技術の融合が、今後の暗号資産市場の新たな成長エンジンになるとの見方を示した。
あわせて、市場のタイミングを狙う投資家にも警鐘を鳴らした。マクロ環境の全面的な改善を待ったり、完璧な買い場を探したりする投資家は、大きな上昇局面を取り逃す可能性が高いと指摘した。
リー氏は「暗号資産市場のリターンの大半は、わずか10日間で生み出される」と強調した。ビットコインは過去10〜15年で年平均リターンが最も高い資産の一つだったが、各年で最も上昇した10日間を除くと、年間リターンは約27%のマイナスになっていたはずだと説明した。こうした点は、市場予測よりも長期の投資視点を維持する重要性を示していると付け加えた。
リー氏の発言は、足元の市場低迷を構造的な崩壊ではなく、投資心理の悪化と資金シフトが重なった一時的な調整として捉える内容といえる。
そのうえでリー氏は、短期の価格変動よりも、技術進展や機関投資家の資金フロー、中長期の市場構造の変化に注目すべきだと重ねて訴えた。悲観論が極端に強まる局面ほど、価格に先立ってファンダメンタルズを見極める必要があるとしている。