DJIは6月29日、小型ジンバルカメラの新製品「Osmo Pocket 4P(OP4P)」を発表した。最大の特徴はデュアルレンズ構成で、標準寄りの画角と広角を1台で切り替えられる。一般ユーザーのVlog用途からクリエイターの本格撮影まで、幅広い需要を取り込む狙いだ。
Osmo Pocket 4Pは、単一レンズのPocket 3やPocket 4と異なり、2基のレンズを搭載した。これまでミラーレスカメラとジンバルの組み合わせで対応していた撮影スタイルを、手のひらサイズの筐体に収めた格好だ。
発売に先立ちVlogコンボを1週間試用したところ、デュアルレンズによる画角の使い分けと、同梱アクセサリーの組み合わせが使い勝手を高めていた。コンボには本体のほか、補助ライト、グリップ、携帯用ポーチ、FrameTapが含まれる。コンパクトで持ち運びやすく、必要な場面ですぐ撮影に移りやすい構成となっている。
デュアルレンズの利点は、シーンに応じて画角を切り替えられる点にある。狭い室内では広角で空間全体を収めやすく、人物を際立たせたい場面では標準寄りの画角が使いやすい。同じ被写体でも画角を変えるだけで映像の印象は大きく変わり、1台で表現の幅を広げられる。
DJIは今回の製品について、プロ向けに特化したモデルではないと説明する。旅行動画などで背景を自然にぼかしたい一般ユーザーにも訴求しつつ、従来はミラーレスカメラとジンバルの併用が必要だった撮影をより手軽にしたい考えだ。一方で、クリエイター向けにはD-Log2のカラーカーブを採用し、17ストップのダイナミックレンジに対応。カラー補正時の調整幅を広げたとしている。
実際の試用では、2つの画角の切り替えは直感的だった。広角で空間を見せ、標準寄りの画角で人物を強調するといった使い分けがしやすく、追加機材なしでも背景のぼけは自然に見えた。
デュアルレンズ化に伴い、消費電力や発熱の増加を懸念する声もありそうだが、DJIはアルゴリズムの最適化により、2レンズ搭載でもPocket 4と同水準のバッテリー駆動時間を確保したとしている。実使用でも、長時間の撮影で発熱が原因となって撮影が中断する場面はなかった。ジンバルの安定化性能も高く、歩きながらの手持ち撮影でも揺れをしっかり抑えた。
今回のVlogコンボで利便性が高かったのが「FrameTap」だ。カメラ本体に装着するリモコンではなく、独立して使えるアクセサリーで、本体から離れた場所でも動作する。内蔵ディスプレイで映像をリアルタイムに確認でき、遠隔で構図調整、被写体追尾、ジンバル操作、録画の開始・停止まで行える。画面サイズは小さいが、構図確認には十分だった。
特に効果を感じやすいのは一人撮影だ。カメラを三脚に固定し、撮影者自身がフレームに入る必要がある場面では、FrameTapの有無で作業効率が大きく変わる。従来は構図を合わせてからカメラ前に戻り、撮影結果を確認して再調整する手順が必要だったが、FrameTapがあれば手元で構図とトラッキングを確認しながら調整できる。
こうした利点は、Vlogだけでなく、インタビューや製品撮影など、撮影者が画面の内外を行き来するシーンでも有効だ。友人や家族との集まりのように、撮る側もフレームに入りたい場面では、離れた位置から追尾対象の切り替えや録画停止を行える点が使いやすい。一人で撮影と進行を兼ねるクリエイターにとって、Vlogコンボを選ぶ理由の1つになりそうだ。
同梱の補助ライトも、一人撮影では実用性が高い。室内や日没前後など光量が不足しやすい場面で顔まわりを補えるため、移動撮影で別途照明機材を持ち出す負担を軽減できる。アクセサリーを個別に追加するというより、本体を中心に撮影時の手間を減らす構成にまとめた印象だ。
◆ 編集工程も支援、制作フロー全体を意識
DJIは撮影後の編集工程を支援する機能も強化した。クリエイター向けには編集ツールを拡充して作業を簡素化し、一般ユーザー向けには素材の書き出し速度の改善を重視したという。アプリではワンタッチで動画を作成できる機能を用意し、本体側では撮影素材をそのまま書き出せるようにした。撮影機材に強みを持つDJIが、編集や書き出しの領域まで対応範囲を広げていることがうかがえる。
Pocketシリーズはすでに一定の存在感を持つ。DJIによると、Pocket 3の世界累計販売台数は1000万台を超え、2025年の販売データでは同時期のミラーレス市場全体の販売台数を上回ったという。Osmo Pocket 4Pはその流れを引き継ぎつつ、一般ユーザーには本格撮影へのハードルを下げ、クリエイターにはポケットサイズでの映像制作という選択肢を提示する製品といえそうだ。
1週間の試用では、少なくとも一般ユーザーが大きな学習コストをかけずに撮影結果の質を高められる点で、バランスのよい仕上がりだった。プロ用途での評価は、D-Log2を使った本格的なカラー補正や編集を経て見極める必要があるが、ポケットカメラの表現領域をさらに広げたことは確かだ。