Synopsysは6月29日、エンジニアリングシミュレーション大手Ansysの買収後の新たな開発構想として、「Silicon-to-Systems」ビジョンを発表した。AIの適用範囲が自動車や医療機器、産業機器へ広がる中、半導体設計の意思決定をシステムレベルの成果に結び付ける新たな製品開発の考え方を示した。
同社によると、自動車ではコンピューティングプラットフォームが競争力を左右し、医療機器は小型のデータ処理基盤へと進化している。産業機器でも、故障を自ら予測する方向へと高度化が進んでおり、製品開発では半導体単体ではなくシステム全体を見据えた設計が重要になっているという。
こうした変化を踏まえ、Synopsysは設計、製造、試験、修正を順番に進める従来型の開発手法が限界に直面していると指摘した。開発後半で不具合が見つかるほど修正コストは大きくなり、半導体ではテープアウト後に判明した問題が日程と費用の両面に影響するとしている。
その対応策として同社が挙げたのが「Shift Left」だ。実機が存在する前の段階からシステムレベルで設計を検証し、開発の早い段階で課題を洗い出す手法への移行が進んでいるとした。
AIについては、設計空間の探索やトレードオフの最適化、反復作業の自動化を支える生産性向上ツールとして位置付けた。強化学習、生成AI、エージェントベースのワークフローを設計プロセスに段階的に取り入れることで、エンジニアは定型的な反復業務ではなく、創造性や製品差別化に注力できると説明している。
デジタルツインについては、単なる仮想モデルにとどまらず、運用中の製品データを反映し続ける仕組みへ進化しているとした。実運用で収集したデータを設計段階に還流させることで、製品の信頼性と性能を継続的に高め、次世代製品の開発につなげる考えだ。
Synopsysの関係者は「今後成功する企業は、半導体からシステムまでの各層を同時に設計し、初期段階で多様なトレードオフを解決できる企業になる」とコメントした。