Alibabaが、AI半導体子会社T-Headの資本増強に動いた。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が23日付で報じたところによると、T-Headは登録資本金を従来の3億元から10億元に引き上げた。自社開発チップをAlibaba Cloudや大規模言語モデル「Qwen」と一体運用し、AI基盤の強化を進める狙いとみられる。
今回の増資は、AI需要の拡大と中国の半導体自立路線を背景に、Alibabaが自社半導体の開発力を高める動きの一環とみられる。T-Headへの資本拡充は約3年ぶり。2023年初めにも登録資本金を1000万元から3億元へ増やしていた。
Alibabaは足元で、AI戦略における半導体の重要性を前面に打ち出している。T-Headが設計したカスタム半導体をAlibaba Cloudと「Qwen」に組み合わせ、チップからクラウド、モデルまでを一体で強化する方針を改めて鮮明にした。
T-Headは2018年の設立後、しばらく対外発信が限られていたが、今年に入って存在感を高めている。Alibabaのウー・ヨンミンCEOは3月の決算説明で初めてT-Headに言及し、自社のグラフィックス処理装置(GPU)が量産フェーズに入ったと明らかにした。社内需要に対応するだけでなく、外部顧客のAI演算需要の拡大を見据えて製品開発を加速していることも示した。
製品面での開示も続いている。T-Headは1月、AIの学習・推論の両用途に対応するカスタム半導体「Zhenyue 810E」を発表し、NvidiaのH20と同等の性能を持つとした。H20は、米国の輸出規制を踏まえて中国市場向けに調整されたGPUとされる。
5月には、複雑なエージェント型AI処理に特化したAIアクセラレーター「Zhenyue M890」も公開した。性能はZhenyue 810Eの3倍と説明している。
出荷実績も明らかにしている。Alibabaは4月時点で、Zhenyueシリーズのチップ56万個を20業種、400社超の顧客に供給したと発表した。顧客には自動車メーカーや金融サービス企業が含まれる。自社サービス向けにとどまらず、外販も進めていることを示した格好だ。
今回の資本増強は、T-Headの分社化構想とも連動している。AlibabaはT-Headを独立した事業体に再編したうえで、従業員が一部株式を保有する仕組みを整え、その後に新規株式公開(IPO)を検討する案を進めているとされる。ただ、上場時期は決まっていない。
中国で半導体投資への関心が再び高まるなか、今後の焦点は2つある。1つは、T-HeadのチップがAlibaba CloudとQwenのエコシステムにどの程度の速さで浸透するか。もう1つは、分社化後に独立事業として外部顧客基盤をどこまで広げ、上場準備を進められるかだ。