写真=Reve AI

サッカー界で、人工知能(AI)を活用した有望選手の発掘が広がっている。一方で、こうした仕組みは将来のスター選手を正確に見抜くというより、既存の偏見や不平等を再生産する恐れがあるとの指摘が出ている。

Gigazineが6月11日(現地時間)に報じたところによると、スウェーデンのマルメ大学でスポーツ科学を研究するリ・ア・モンシスは、サッカーのスカウティングに使われるAIについて、意思決定支援には有効でも、才能そのものを客観的に測るには限界があると説明した。

近年は、エリート育成を担うサッカーアカデミーやクラブが、GPSトラッカーや自動映像解析ツール、AIプラットフォームを活用して選手データを収集している。有望選手を早期に発掘できれば収益機会も大きいため、技術導入に積極的なクラブは少なくない。

問題は、AIが過去データをもとに「成功した選手」のパターンを抽出する仕組みにある。従来のスカウティングが、身体能力に優れた選手や特定の社会経済的背景を持つ選手を優先してきた場合、AIも同じ傾向をなぞる可能性があるという。

実際、サッカー界では早期発掘の成功例が注目を集めてきた。スペインのラミン・ヤマルは6歳でFCバルセロナの育成組織に入り、15歳9カ月16日でトップチームデビューを果たした。

その一方で、アレックス・モーガンは10代になってから本格的にサッカーを始め、ルカ・トニもトップレベルでプレーするようになったのは20代前半だった。選手ごとに身体面、精神面、社会面の成長速度は異なり、幼少期の情報だけで長期的な潜在力を見極めるのは難しい。

モンシスは、AIがこうした個人差を十分に捉えられない可能性があるとみる。「データに基づくアプローチは意思決定を助けるが、最終的に主観性を取り除くことはできない」とし、どのデータを集め、どう分析し、何を才能とみなすかは、結局は人間が決めると指摘した。

また、定量データが豊富にあっても、選手の経験や相互作用、試合ごとの文脈までを完全に捉えるのは難しい点も限界として挙げた。

こうした構造は、サッカー界に根付く既存の不平等とも結び付く。エリート選手への道筋は、これまでも社会的・経済的・文化的条件の影響を受けてきた。AIがそうしたデータを学習すれば、不平等をさらに拡大させる恐れがある。

同年代の選手より身体の発達が早い選手が有利になりやすくても、それが長期的な潜在力を意味するとは限らない。イアン・ライトやルカ・トニのような遅咲きの選手は、こうしたシステムでは見落とされる可能性があるという。

選手管理の面でも懸念はある。若い選手が、自身のデータが継続的に収集され、AIで分析されていることを意識すれば、競技面だけでなく心理面でも大きな負担になり得る。

研究では、監視の強化が選手だけでなく、コーチやスタッフに対しても「常に評価されている」という圧力を生むことが示された。

もっとも、モンシスはAI活用そのものを否定しているわけではない。クラブにとってAIは、人手では処理しきれない大量の情報を分析し、従来は見逃されがちだったパターンを捉え、地域的な制約を超えて選手を評価する手段になり得るからだ。焦点は導入の是非ではなく、どう活用するかにあるとしている。

モンシスは「今後の課題は、新技術を導入すること自体ではなく、その使い方を検討することだ」と述べ、クラブはデータの限界を認識したうえで、教育と専門性への投資を進めるべきだとした。

今回の議論は、AIが選手発掘の効率を高める可能性があっても、学習データや評価基準まで自動的に公正になるわけではないことを示している。スポーツ現場では、技術導入そのものよりも、データの解釈と人の判断をどう組み合わせるかが問われている。

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