Bank of Americaのブライアン・モイニハンCEOは、銀行におけるAI活用では効率化やコスト削減よりも、回答の正確性を優先すべきだとの考えを示した。顧客対応では誤答が信頼低下に直結するため、AIの導入には厳格な検証と明確な制約が欠かせないという。
米金融メディアAmerican Bankerが8日(現地時間)に報じたところによると、モイニハン氏はインタビューで、銀行のAIは応答速度だけでなく、回答の正確性が同じくらい重要だと強調した。
具体例として、モバイルアプリ上のAIアシスタント「Erica」に顧客が特定口座の小切手取引履歴を問い合わせるケースを挙げた。その場合、必要なデータが過不足なくそろっていなければならず、誤った回答は顧客の信頼を大きく損なうと指摘した。こうした特性から、銀行では誤答の許容余地が極めて小さく、システム設計や検証にも大きな手間がかかると説明した。
こうした見方は、AIを生産性向上や人件費削減の手段として語る一般的な潮流とは一線を画す。Unconventional Ventures共同創業者のテオドラ・ラウ氏は、多くのCEOがなお運用効率の観点からAIを語る一方、銀行では正確性がより重要な判断基準になると指摘した。
Intuitechのマテ・イェンドロロビクスCEOも、ラウ氏のポッドキャストで「正確度80%のソリューションでは、銀行では価値がない」と述べた。一定の精度でも活用できる一般的な事務業務とは異なり、金融サービスでは一度の誤答が大きな問題につながりかねないという認識を示した。
Bank of Americaは今年、AI導入に約2億5000万ドルを投じた。年間の技術予算は130億ドルで、このうち40億ドルをAIを含む新技術に充てている。AI戦略の中核に据えるのが、2018年に導入したAIアシスタント「Erica」だ。
Ericaは当初、モバイルアプリにGoogle検索を組み込む機能開発から出発したという。当時は、顧客が残高を尋ねると体重計の写真やヨガ教室など、的外れな検索結果が表示されることもあった。そこで社内の開発チームはスタンフォード大学の研究陣と協力し、顧客の問いかけを銀行業務の文脈に即して解釈する予測モデルとしてEricaを構築したとしている。
現在のEricaは110のシステムと連携し、約700種類の問い合わせに対応する。利用者は2000万人に上り、四半期当たりの利用回数は約2億回に達する。社内でも約20万人の従業員がAIを日常業務に活用しており、社内向けEricaがITと人事に関する問い合わせを処理することで、ヘルプデスクへの電話を55%削減した。
一方で、Bank of AmericaはAIの適用範囲をあえて限定している。モイニハン氏は、実際の判断を伴う業務には必ず人が関与すべきだとし、信頼が中核となる業種では回答が完璧でなければならないと述べた。そのため、システムには十分な制約を設け、正しい回答を返せるよう運用していると説明した。
将来的には、自由度の高いエージェント型AIがEricaに取って代わる可能性にも言及した。ただ、現時点では検証済みの仕組みが実際に機能することの方が重要だとして、慎重な姿勢を示した。
生成AIの導入が広がる中でも、顧客対応や中核業務では、速度より正確性、自動化より検証が優先される可能性を示した格好だ。金融機関のAI競争が本格化する中、データ基盤とモデルを統制する力が、銀行の競争力を左右する要素として重要性を増している。